関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■失語症や自由に動かない指…絶望から復帰までの一部始終
大阪に「脳出血」から復帰を果たしたパンクロッカーがいる。ベーシストのコクーンさん(54)は16歳からパンクロック一筋。結成37年目を迎えるパンクバンド『THE INDEX』のメンバーであり、さらに元ロリータ18号のMAYUCHIと組んだ『ザ・マユチックス』や、元チェッカーズ大土井裕二の『大土井バンド』に参加するなど、多方面で活躍する。
そんなコクーンさんが脳出血で倒れたのが2020年10月3日。ライブハウスに出演し、ザ・マユチックスで演奏していた真っただ中の出来事だ。
「2曲目を弾き終ったとき、右半身が動かなくなったんです。体の変調をメンバーに伝えたくても、ろれつが回らない。そのまま意識を失い、ステージ上で転倒しました」
幸い、次の出番を控えていた巨漢のサックス奏者に抱きかかえられ、頭を地面に強く打つ被害は免れた。そのまま救急車で運ばれ、即入院。
「手当てが遅れていたら、きっと死んでいたでしょう。ただ、意識が戻ったことを妻に知らせようにも、電話のかけ方が分からない。メールの打ち方も思い出せない。なんとか電話が通じても、失語症になっていて言葉が口から出てこない。“これは大変な状況になったぞ”と、打ちひしがれましたね」
問診では医者から動物のイラストを見せられ、「これが何か分かるか?」と尋ねられた。
「犬もキリンも、もちろん知っています。けれども、名前が頭に浮かんでこない。さすがに、“俺はこんな簡単なことも分からなくなったのか”と落ち込みました。リハビリを重ねるうちに次第に動物の名前を思い出し始め、“これはゾウさんです”と答えられるようになりました。あまりにもうれしくて、動物にも“さん”づけしていましたね」
■先輩ミュージシャンの一言が大きな励みに
それから1年、病院と自宅でリハビリを続けた。ねじれたまま戻らなくなった脚や腕を筋トレで矯正し、自由に動かぬ指でベースを必死に弾いた。
「ベースは力を入れないと鳴らない楽器です。“ライブをやるんや。ステージに戻るんや”、その意識だけでピックを動かし続けました」
そうして1年後、コクーンさんは同じライブハウスで復活を果たした。復帰を祝し、コクーンさんゆかりのバンドが一堂に集結した。
「正直に言って、脳出血前の4分の1しか回復できていないです。大土井裕二さんに“ベースが下手になってしまい、すみません”と謝ったら、“音楽にはテクニックはいらない。ハートがあればいいんだよ”と言ってくださって。その言葉を励みに、今日もパンクロックを続けています」
パンクス・ノット・デッド! 音楽を愛する気持ちが一人のパンクスを生還させた。そして脳出血はすべての中年にとって、まったく他人事ではないのである。
吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「落語は多様な生き方を肯定してくれる世界なんです」露の新幸「ライブハウスから落語家への巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「河内音頭でみんなを笑顔に!」桂文福「河内音頭を愛する落語家の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「還暦から新たな才能が爆発!」高橋繁行「切り絵を極めるルポライターの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「自分が見てきた音楽業界をそのまま描きました!」岡本崇「映画を監督したミュージシャンの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「自分の中の照れくさい部分をさらけ出しました」山田ジャック「ウミガメという曲を歌う芸人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「北海道で水たばこに目覚め脱サラカフェバー店主に!」日下慶太「水たばこと写真集に心酔する男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「音楽への熱い思いが復活の原動力に!」コクーン「脳出血から生還したパンクロッカーの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「何かがおかしい」気になる場所に行って来ました!最東対地「何かがおかしい」場所を訪ねる男の巻!珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「国民的作家の私生活を追ったルポルタージュを上梓!」花房観音「山村美紗の生涯を追う女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「愛情たっぷり“おばあめし”をあなたにもおすそわけ」大迫知信「“おばあ”の料理を愛する男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「夢は寿司が握れる職人パフォーマーとして海外進出!」古家後惣一「寿司職人として再出発する芸人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「幾多の別れに立ち会った青年の日常に迫る!」下駄華緒「火葬場のウラ側を知る男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「インターネットが埋もれた名歌手を発掘!」西城リサ「再々デビューを果たした女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「大御所芸人たちも忖度なしでディスり倒す!」村越周司「今のお笑いに物申す元芸人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「ミュージカルを観て元気になってほしい!」穂月心「ミュージカルの魅力を伝える女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「北海道の怪談は壮絶でスケールも大きいんです」田辺青蛙「北海道の怪談を集める女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「安くてうまいたこ焼きは師弟の絆の証!」大平我路「師匠のたこ焼き屋を受け継いだ芸人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「アーティストとして目覚めたきっかけは“愛”!」こんそめぱんち☆木村「神戸が誇る超巨漢アーティストの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「サメって意外とおとなしいんですよ!」寿し まつもと 松本剛「サメを愛するお寿司屋さんの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「最初に作った200セットはアッという間に完売!」北新地RAKUSUI佐藤かずひろ「『修羅場かるた』を作った男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「爬虫類飼育初心者の皆さんぜひお店にお越しください」OKAHAKOふーじー「爬虫類専門店を開いた会社員の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「リング上も歌っているときもどっちも真剣です!」ジョーカー冬木閣下「歌って暴れるおじさんレスラーの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「地震をきっかけに移住4年間で得たモノは?」月亭太遊「九州から帰ってきた上方落語家の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「語り始めたら停車不能!熱すぎる鉄道愛!」代走みつくに「鉄道を愛しすぎた芸人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「監督兼ラーメン職人!日本で唯一の二刀流!!」中華そば みみお 佐藤訪米「映画とラーメンを究める男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「VFXの第一人者が娯楽伝奇時代劇を製作!」大木ミノル「ホラーアクション時代劇を撮った男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「自らの肉体すら実験台にして技術を磨く!」SHINRYU TATTOO STUDIO辰流「世界に名をとどろかせる刺青師の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!
- 「実力派怪談師の最恐コレクションとは!?」田中俊行「呪われた物を集める男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!