「リング上も歌っているときもどっちも真剣です!」ジョーカー冬木閣下「歌って暴れるおじさんレスラーの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
ジョーカー冬木閣下

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■暴君レスラーのもう一つの顔は人の道を説く低姿勢な歌手!?

「先週の試合で、敵対するヒールレスラーに頭を割られましてね。頭皮がえぐれ、頭蓋骨がむき出しになったんです。8針も縫いましたよ。思わず相手選手に“ハゲたら、どないすんねん!”と怒鳴りました」

 まるで、かすり傷であるかのように、事もなげに語るのがプロレスラーのジョーカー冬木閣下。ラリアットの拳が目に入り、一時期は視力を失っていたというから凄絶だ。

 とにかく生傷が絶えない。タイガー・ジェット・シンのようにサーベルを振り回しながらリングに上がり、暴れん坊の軍人と異名を取るほど獰猛なファイティングスタイルで大人気の閣下だが、返り討ちにあって大ケガをする日も少なくないのだ。

 大阪の団体「プロレスリング紫焔」に所属し、2022年12月に、6人タッグ選手権のチャンピオンとなった閣下。

 しかし、王座に輝くまでには、なんと15年もの苦節の歳月を要したという。

「もともと総合格闘技をやっていて、プロレスデビューが遅いんです。初めの頃は若い選手にボコボコにされ、オヤジ狩りに遭うような前座試合ばかりやっていました」

 閣下の年齢は「永遠の40代」。実年齢は非公表だが、プロレスの世界ではかなりの高齢。かつては同じ壮年レスラーたちと「シルバーズ」というタッグチームを組んでいたほどだ。

 しかし、若手選手の練習台のような立場に、ついに堪忍袋の緒が切れた。「脳みそ揺らしたろか!」の絶叫とともに大逆転。現在のスタイルを確立した。

「相手がひるむほど悪態をつくのが、僕のやり方です。試合が始まると必ず口汚く、ののしります。“酔っ払いのおっさんと変わらんやないか”と、よく言われますよ(苦笑)」

■リングでは大暴れ!“歌手活動中”は…

 リング上ではヒールすらも、たじろぐほどの毒舌家に変身する閣下。だが、実は、もう一つの顔がある。

 それは歌手。アイドルや声優によるアニソン軍団「帝国歌激団」を率い、自らもイベントやライブハウスで熱唱する。さらに『世直しJOKER』でメジャーデビューを果たした。

 振り込め詐欺やモラハラ、セクハラ、酒気帯び運転など、世の中から悪事をなくそうとする啓蒙ソングだ。リングで大暴れする姿からは想像もつかない、人の道を説く歌なのだ。

「歌手活動は真剣なんです。歌っているときは、自分がレスラーであることを忘れます。ただ、スナックを1軒ずつ回ってCDを手売りする日々は、しんどかったですね。CDを買ってもらうため、何度も頭を下げました」

 リングでは暴君として振る舞いながらも、会場の外では低姿勢に生きる。その両面性は、強いカードにも弱いカードにもなるトランプのジョーカーそのものではないか。

 シニア世代のレスラーの生き方には、大いに学ぶものがある。閣下に敬礼!

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

吉村智樹のこの人、どエライことになってます!

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