「人性経験が滲み出た心に響く歌で大人気!」観月ちか「歌手デビューした居酒屋のママの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
観月ちか

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■ライブ配信が人気の居酒屋ママ店内でギターを手に弾き語り!

 豊臣秀吉が月見の宴を開いたことから、その名がついた京都の観月橋。この橋のたもとに居酒屋『ひまわり』がある。正面はガラス張りで月の光が差し込み、風情ある雰囲気。名物は『豚キム豆腐』。四川の調味料を使った本格派ピリ辛ソースが豆腐とマッチし、冷たいビールが進む、進む。

 そして、この店の魅力はなんといっても、ひまわりの花のようにおおらかなママ、観月ちかさん(53)のキャラクター。彼女はなんと、店内で、ときおりギターの弾き語りを披露してくれるのだ。

「私の歌を聴きに、北海道や沖縄からもお客さんが来てくれるんです。皆さん、“癒やされた”“元気をもらった”と言ってくださいます。涙を流す人もいるんですよ」

 居酒屋のママの歌を聴くために、わざわざ全国から客が訪れる。実は観月さん、

「chikarin」の愛称で日本中に多くのファンを抱える人気「ライバー」(ライブ配信アーティスト)なのだ。

 彼女の歌声には、人生の厚みを感じさせる力強さがある。それもそのはず、その半生は凄絶だ。

 かつては幼稚園の先生だった。初めてのクラス担任は、くしくも「ひまわり組」。しかしモンスターペアレンツを恐れるあまり、教育をなおざりにする園の方針と合わず退職。結婚したが、夫とはすれ違い続きだった。

「娘が骨折した日も、帰ってこない。たまりかねて、小学生の娘2人を連れて家を飛び出したんです」

■人生の苦難を越えて見事歌手デビュー!

 ナメクジが出る安アパートで暮らしながら、ラウンジレディと呉服の営業職をかけ持ちし、女手一つで娘を育てた。深夜まで水商売をし、睡眠時間がほとんどないまま、営業車を運転する危険な日々。心身に不調をきたし、胆嚢を全摘出。慢性膵炎にもなった。

 そんな苦労の日々に光が射した。たまたまライブハウスでサックス奏者、坪山健一氏のプレイを見て感激。

「いつか、この人の演奏で歌いたい」と音楽の勉強を始め、ライバーとして歌を披露するようになったのだ。

 艱難辛苦を乗り越えてきた観月さんが、このたび、ついに『雨の京都』でCDデビューを果たした。京女の生き様を歌った、雨粒がキラキラ光るような、艶やかな情緒を感じる曲だ。

 サックスとギターは、音楽を始めるきっかけとなった坪山健一氏である。

「曲のナレーション、ジャケットの写真、タイトルの筆文字など、ライブ配信で知り合った人たちの協力でデビューできました。ご縁の大切さを、改めて感じましたね」

 雨降って地固まる。『雨の京都』は観月さんの、これまでの人生経験の集大成と言える。彼女は今日も居酒屋のカウンターに立ち、真夏のひまわりのような朗らかさで、人々を笑顔にしている。雨の曲を歌ってはいるが、この店は、いつも快晴だ。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOWやねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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