関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■体だけではなく心も癒やす絶品タイ料理を召し上がれ!
残暑が厳しく、体力の衰えを感じる9月。こんな季節は、冷たいビールとピリ辛のエスニック料理で、スタミナをつけてみてはいかがだろう。
大阪の天神橋筋商店街に本格タイ料理専門店『コップン天満』がオープンし、話題となっている。自家栽培した朝採れの新鮮野菜をふんだんに使ったメニューはどれも栄養豊富。特製ダレに漬け込んで焼いた手羽先やスペアリブが、タイの「チャーンビール」とよく合う。
珍しいのが「3種のカオマンガイ」。スープで茹でた鶏、鶏の炙り焼き、フライドチキンの3つの味が楽しめるタイのチキンライスだ。
「タイ料理の調理師国家資格を持ち、和食の経験もある料理長のヨンさんが炊いたお米のおいしさを、ぜひ味わってみてください」
こう語るのは日本人店長のヌイコさん(42)。22歳からタイ料理の店で働き始め、以来、タイ料理一筋。今回のオープンで専門店は5軒目という、タイ料理に激ハマりした20 年だった。
■味の奥深さに触れ現地に渡り研究!
タイ料理とともに生きる彼女だが、初めから大好きなわけではなかった。
「もともとはインドネシアのバリに憧れていました。“バリに関係が深い仕事に就きたい”と探していたんですが、見つからなくて。そんなとき、京都でたまたま見つけたのが、タイ料理専門店のホールスタッフ募集の貼り紙。“同じ東南アジアだし”と軽い気持ちで応募したんです」
初めて働いたタイ料理店はスタッフ全員、日本人。料理も特においしいと思わなかった。しかし、引き抜かれるようにして働き始めた2軒目のタイ料理店は調理師ら全員がタイ人。ここで、ついに開眼する。
「賄いで食べたカオソーイ(チェンマイのココナッツラーメン)のおいしさに、雷に打たれたような衝撃を受けました。これまで嗅いだ経験がない魅惑的な香り、トッピングされた高菜の漬物とスープの相性、すべてが最高だったんです」
タイ料理の奥深さに触れたヌイコさんはタイへ渡り、屋台料理の研究を始める。そこで、さらに独特な食文化に驚かされた。
「タイは“渋い”“苦い”“クサい”といったクセの強い食材を料理に取り込むのが上手なんです。それこそ“これ、ウンコ?”ってくらい、匂いがキツいハーブを使って、絶品の料理に仕上げる。おいしさの幅が、とてつもなく広いんです」
料理とともにタイ人の人間性にもひかれた。働いた3軒目の店のタイ人マダムは歯に衣着せず物言いをし、日本人にはある
「気兼ね」がない人だった。しかし、その裏表のなさに心はほどけ、それまで人とのコミュニケーションが苦手だったのが、人前でも自分の気持ちを話せるようになったという。
「タイ料理は激辛があれば、やさしい味つけもある。世代を超えた、誰にでも合う懐の深さがあります。体だけではなく心が疲れたら、タイ料理で癒やされてほしいです」