経済ジャーナリスト 須田慎一郎が徹底予想!


いささか旧聞に属する話で恐縮だが、去る14日、政府の規制改革会議が、農業分野の改革案をまとめた。この件に関しては、多くのメディアが大々的に取り上げたため、ご記憶されている方も多いと思う。とは言え、そうしたメディアの報道スタンスは、まったく腰が引けたもので、伝えるべきことをきちんと伝えているとは、とても言い難い。

だとしたら、伝えるべき最も重要なポイントとは、いったい何か。それはこの"改革案"が、もしに実行に移されたならば、農協はバラバラに解体され、今の姿をとどめることは決してないだろう、ということだ。そのインパクトは、事実上の"農協消滅"と言っても過言ではない。そのもたらす影響は、郵政民営化の比ではない。

そもそも農協の経営実態は、極めていびつなものだった。以下、具体的に説明する。現在の農協の経営は、以下の3つの事業によって成り立っている。①営農(物品、農作物の購買など、農業指導)②共済(保険事業など)③信用(金融事業)。農協にとってのその"本業"と言えるのは、①の営農事業であることは間違いない。ところが、この営農事業は、ほとんどの農協で大赤字に陥っており、その赤字を信用事業の黒字で何とか補填しているのが実情なのだ。

前述の規制改革会議の"改革案"の最大のポイントは、その本業である営農事業に専念しろ、というもの。しかし、それゆえに筆者は、それが実行に移されたならば農協は消滅する、と指摘したのだ。安倍首相は、これを実行に移すつもりのようだ。相当なヤル気を見せている。

もしこの改革が実現したならば、農協という日本の農業にとっての"重し"がなくなり、われわれ消費者は、今よりも安くて美味しい米や野菜が食べられることになるだろう。そのことだけは間違いない。もちろん農協サイドは、間違いなく全面的に反対するだろうけれども……。


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