最初は生霊となって現れ、次に現実の男として梅雨子とまじわった夏川。彼との関係は続いていたが、梅雨子もいろいろ悩んでいた。

夏川には家庭があったのだ。今の季節のようだ。じっとり官能的ではあるけれど、晴れ間がなかなか見えない。それでも、夏川と会わない夜は金縛りに遭い、夏川としか思えない男がやってきて、まじわってしまう。

生霊との行為は、ときに本人とのそれよりもよかった。もちろん夏川本人に、あなたの生霊ともやってる、とはいえずにいた。

そんな頃、同じ会社に勤める後輩の男が近づいてきた。
彼もまた、前々から気にはなっていた。一緒に食事をした帰り道、酒も入っていたこともあって、なんとなくいい雰囲気になった。

思い切って自宅に誘ってみたら、彼は梅雨子の誘いを待ち構えていたようだった。
だんだん、自宅マンションが近づいてくる。梅雨子は一人暮らしで、夏川にも合鍵は渡してない。あのマンションの十階の端よと、梅雨子はマンションを見上げて指さした。

彼女の部屋の窓は、煌々と明るかった。誰もいないはずなのに。一瞬、電気をつけたまま出てきたのかと思ったが、部屋を出たのは昼過ぎだった。

誰かいるの? 後輩の彼に聞かれ、梅雨子は首を横に振った。

そして部屋のドアを開けると、電気は消えて真っ暗だった。
不審者が侵入していたのか、それとも怪奇現象か。どちらにしても怖いのだけれど、酔っていて発情もしていた二人は面倒なことは後回しにし、ベッドに入ってしまった。

いつまでもじとじとと小雨の続く蒸し暑い夜、梅雨子は目をつぶっていると後輩の彼ではなく、夏川と濃密にまじわっている気持ちになった。結局、後輩とはその一晩きりになってしまった。
後輩はそれ以上続けないはっきりした理由はいわなかったが、なんだか怖いから、とつぶやくようにいった。

次週に続く



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