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昨年12月に上海に近い浙江省の烏鎮(ウーチェン)という街を訪れたときのことだ。この烏鎮はこの地域の特徴である張り巡らされた水路(クリーク)を生かした街なのだが、街角にあった1本の古木に眼が釘付けになった。日本語でトウネズミモチという木だが、形が女性のアソコにそっくりなのだ。

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思わず腰を近づけそうになった……わけはないが、ちなみにトウネズミモチの中国名は「女貞」。何とも意味深である。樹齢85歳の「おばあさん」と間違いを犯すこともなく、無事写真に収めただけでその場を立ち去った。

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この木を紹介したのは、烏鎮という街のことを知ってもらいたかったからだ。実はこの烏鎮、クリークを生かした観光地としてそれなりに客を集めるようになっているが、実は人工的に作られた街なのだ。

安い労働力を利用して輸出で稼いで来た中国経済は、消費型経済への構造改革を迫られている。私が日本に来た26年前にも日本でよく言われていた「内需拡大」だ。そのため急ピッチで観光地が全国で整備されている。

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ただ、中には問題のある観光地も生まれている。この烏鎮もその1つで、街の中に造られた人工池の水の汚れぶりが半端ではないのだ。魚や植物は当然生息しておらず、水は重金属で汚染されたような不気味な色をしている。古い中国家屋の間を水路が流れる光景は、一見よくある美しい観光地だが、実際には「死の街」の印象しか受けない。

「内需拡大」を目指すわが祖国の努力をあえて悪く言うのは、無理な開発が新たな環境汚染を生む恐れもあるからだ。

それだけではない。今、中国では、地方の経済発展で好成績をあげて中央への出世をもくろむ地方官僚が、やみくもな借金で無茶な開発をすることが問題になっている。そう、中国は日本が苦しんだバブルにかなり足を突っ込んでいるのだ。

この烏鎮のケースがそれに当たるか分からないが、中国はかつて日本が苦しんだ環境汚染とバブルの経験から学ぶべきだ、とわが祖国にあえて苦言を呈しておく。


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