「危険ドラッグ」という名称がデビューした。今回は改名について考えたい。

「脱法ハーブ」ではその危険性が伝わりにくいとして警察庁と厚生労働省は新名称を募集した。その結果選ばれたのが「危険ドラッグ」である。

寄せられた案は1万9887件。最も多かったのは「準麻薬」(183件)。次が「廃人ドラッグ」(140件)、「危険薬物」(123件)。「危険ドラッグ」は102件だったという。他の1万9千以上の案がとても気になる。個人的には「不良ドラッグ」「青春ドラッグ」「あかひげドラッグ」など、手を出したら恥ずかしそうな名称のほうがよい気がしたが、無難を選ぶのがお上だ。

ここでプロレス界を例に出したい。なぜなら、無難などいらぬ、ファンに覚えてもらってナンボの世界だからだ。ファン公募の改名で代表的なのが「長州力」だろう。山口県出身の吉田光雄がいきなり生まれ変わった。インパクトじゅうぶん。セルフプロデュースをする人もいる。新日本プロレスの棚橋弘至は「太陽の天才児」というニックネームがあったが、自らの提案で「100年に1人の逸材」とした。当初は報道陣にもスベリまくったらしいが、言い続けた結果定着した。言葉は、強いほうが印象に残る。

プロレスとは「意味づけ、価値づけ」の闘いである。

棚橋はフィニッシュホールドも「ハイフライフロー」と名付けた。一見すると昔からあるフライングボディプレスという技が、レスラー側の努力によって特別な価値をつけることができたのだ。リング上で相手と対戦するだけがプロレスではない、と棚橋は証明した。

先日、元ノアのKENTAが世界最大の団体「WWE」と正式に契約を結んだ。あのリングに上がることになれば、WWE流のプロデュースにしたがって新しいリングネームを名乗る可能性が高い。これはわかりやすく言えば絶頂期の「エンタの神様」で一躍全国デビューする芸人のようなもの。KENTA自身も改名にこだわりがないと言っている。フランスではモンスター・ロシモフと名乗っていた大男が「アンドレ・ザ・ジャイアント」と改名し、アメリカでも大成功した例がある。名前は大事だ。

さて、もういちど危険ドラッグに話を戻したい。TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」で荒川強啓氏は「脱法ハーブ」を「だっぷうハーボ」と言い間違えた。私も出演している番組なのだが、数日のあいだ、スタッフも荒川さん本人もこの「新名称」のマヌケさに脱力していた。

新名称は「危険ドラッグ」より「だっぷうハーボ」のほうがよいのではないか?

手を出したら負けの気がする。
 

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