人生に役立つ勝負師の作法 武豊
100回記念「武豊スペシャル」です



半月ほど前のことです。

「お祝いのインタビューをお願いしたいのですが」

電話口でそう言われ、一瞬、何のことかわからず、頭を捻ってしまいました。とっさに頭に浮かんだのは、ケガから復帰しての勝利です。しかし、その程度のことでお祝いのインタビューというのは、ちょっとおかしい。

「お祝いって、いったい何のですか?」

「100回のです」

――100回!?

GI100勝を達成したのは、昨年秋の「マイルCS」ですから、ますます、わけがわかりません。

「100回って……何かありましたっけ?」

「連載です。週刊大衆の連載が10月6日発売号で、記念すべき100回を迎えるので、その記念のインタビューをお願いしたいと思いまして」

――なるほど。そういうことだったのか。

ついこの前スタートしたと思っていたのに、もう、100回になるんですね。正直、自分でも相当に驚いています。ただ。記録に限らず、区切りの数字があるということは、最初の1回があるということ。誕生日。初給料。そして、初めての恋……。

僕に限らず、皆さんも初めてのことは記憶にしっかりと残っているんじゃありませんか。騎手の場合はさらに、初騎乗、初勝利、初GI、初の海外勝利……と、"初"の付くことがたくさんあります。

その中の一つ、僕にとって記念すべき重賞初勝利はデビュー1年目、1987年10月11日、京都競馬場で行われたGⅡ「京都大賞典」でした。

パートナーのトウカイローマンは、84年のオークス馬。最初のレース、「小倉記念」は5着(1番人気)だったにもかかわらず、もう一度、チャンスをくれた中村均先生の期待に応えるためにも、"絶対に勝ちたい"という思いで挑んだレースでした。

レースは3~4番手から直線抜けだして、2着に半馬身差をつけて優勝。デビュー1年目の僕に、「ジャパンカップ」へのチケットをプレゼントしてくれました。

この年の「有馬記念」を最後に引退したため、騎乗させていただいたのは3戦だけでしたが、騎手として貴重な体験をさせてくれた強くて可愛い女の子でした。

その後も京都大賞典では89年、90年はスーパークリーク。91年、93年はメジロマックイーン。96年はマーベラスサンデー。05年はリンカーンと、これまで7度優勝を飾っています。僕の今年のパートナーは、GⅠ100勝を達成したトーセンラーの予定です。

マイルも長距離も難なくこなすトーセンラーとのコンビは、僕にとっても心強い限りです。ライバルがどうのではなく、自分の競馬に徹することができれば、結果は黙っていてもついてくると信じています。今週は100回記念のインタビューと併せて、武豊スペシャルを愉しんでください。




本日の新着記事を読む