キャバクラやスナック、カラオケボックスにいくと必ず目にする、通信カラオケ用選曲リモコン「デンモク」。タッチパネル型の液晶画面で、素早く歌いたい曲を探すことができるもので、もはや見たことのない人はいない、おなじみの機器だ。名前の「デンモク」は「電子目次本」の略から。通信カラオケシステムDAMを販売する第一興商の登録商標だ。
昭和のバブル組のみなさんは、番号入力型の縦長リモコン&ブ厚い目次本で、歌いたい曲を選んでいただろう。酔った手元で本体に番号転送を試みるも上手く行かず、何度も転送ボタンを押す…なんて経験をしているはずだ。

そんなアフター5が日常だった40-50代のみなさんからすれば、タッチパネルの液晶搭載のデンモクの登場は、それだけで大進化だったハズ。そのデンモクが昨今、完全リニューアルしていたのをご存知だろうか。SmartDAMと言われる最新のデンモクがコレだ。

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10.1インチという巨大な高精細液晶は、iPadなどでもお馴染みの静電式タッチパネルを採用し反応も上々で、メチャメチャきれい。しかもトップ画面には動画が流れてる…。艶あり黒とゴールドでまとめられた外観は、高級クラブでもファミリー向けのボックスでも違和感のない秀逸なデザインだ。

さらには歴代デンモクの特色、「あの頃検索」や「ジャンル検索」はもちろん、ブロードバンド接続を活かし、全国ランキングがリアルタイムに確認できる「ランキングバトル」で歌唱力を競うことも可能。また、「DAM★とも」会員になれば、あらかじめ登録した自分の得意曲を呼び出せたり、自分の歌っている姿を撮影した動画も公開できるなど、多機能ぶりがハンパない。カラオケ業界で進化した、独自のネット端末といっても過言でないモノに仕上がっているのだ。

また、このSmartDAMでは、10.1インチの大画面を活かして、カラオケ演奏中の歌詞テロップを表示することが可能になった。スナックのカウンター席で、真後ろのモニターを見ながら窮屈な姿勢で歌うこともなくなるわけだ。キッズ向けのミニゲームなども搭載し、ママ会でグズる子供のあやし役にもなってくれる。さらに、クラブのママさん向けに顧客ごとの十八番や誕生日、前回の来店日時なども記録できる機能を搭載するなど、まさにカラオケコンセルジュともいえるハイパーなガジェットなのだ。

さて、この最新機種端末を見ると、オールタッチパネルになっているのが分かるが、下に4つのボタンが独立している。特に赤字で目立つ「演奏中止」のボタン。演奏中止も含めタッチにすればいいようなものだが…? 開発した第一興商きってのチョイ悪(?)部長・小澤氏にその理由を聞いてみた。
 

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第一興商
開発本部 商品開発部
部長 小澤二穂氏


「『演奏中止』は、お客様が一番使うボタンなんですね。だから、画面がどんな状態にあってもすぐに押せるように工夫をしております。但し、誤って他人の曲を中止してしまったり、非常にクリティカルなボタンでもありますので、2002年にデンモクをリリースして以来、演奏中止ボタンの配置などにはとても気を遣っています。過去には、このボタンの表面だけ消耗しているデンモクもありました。お酒が入ると、ついつい力も入ってしまいますからね(笑)。それほど使用頻度の高いボタンであり、これからモデルが変わっても、瞬時に使えて誤操作がないことを両立させます」

このように、酔客に使われる前提の「デンモク」は、現場の要望を100%満たし、日本独自の文化が産んだ叩き上げのガジェットなのだ。話題のiPadと似たような形状だが、堅牢さではiPadなど足元にも及ばない。

「落とされる、本体にお酒をこぼされるなどは想定内。カラオケボックスの中では、手荒に扱われることだってあります。さらに、営業時間中に電池切れなどということもあってはいけない。これはお客様が悪いのではなく、そういうヘビーコンディションで使われるという前提で、我々が設計していかなければならないんです」

普段何気なくカラオケ店やスナック、キャバクラなどで手にするデンモク。実はその形状や機能は飲み屋の現場で磨きぬかれた、日本一堅牢な「酔っぱらいと戦う電子機器」だったのだ。新年会などでスナックやカラオケ店に行ったら、一度デンモクの裏表をきちんと観察していただきたい。持ちやすい形状、随所にあるすべり止め、落下衝撃の吸収…。「何やってるの?」とスナック嬢に突っ込まれたら、ぜひデンモクの、兵器のような堅牢さをアピールしていただきたい。でも決して投げたりしないように…(笑)。

 

 

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充電式クレードルに収まった初期型デンモク(手前)と7インチモデル最新型(後ろ)。お店側の負担を軽減するため、充電式クレードルは初期型から最新型まで共通だ。

 

 

 

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検索機能は年を追うごとに進化。最近では年齢を入力すると、その年齢の人がよく知っている曲を自動的に選出してくれる機能が人気だとか。

 

 

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最新型デンモクの背面。初期型に比べるとすべり止めが増えている。持ちやすさもアップした。

 

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