1990年代末から2000年代にかけて、男性向けのED治療薬として世界的なブームとなった「バイアグラ」。あれから15年が経ち、ついに女性用のバイアグラがアメリカで医薬品として承認される見通しとなった。
このほどアメリカの「食品医薬品局(FDA)」の諮問委員会が承認を勧告したのは「フリバンセリン」という、もともとドイツの製薬会社が抗うつ剤として開発した薬品。
抗うつ剤としての効果はあまり高くなかったようだが、性欲を刺激するドーパミンの分泌と伝達を向上させる効果が確認され、改めて行われた臨床試験で女性の性的欲求低下障害に効果があると立証されていた。
つまり男性向けの「バイアグラ」が性機能を回復させるのに対して、女性向けの「フリバンセリン」は性欲を高める効果があるというわけである。
FDAは2010年にいったん「薬によるメリットが危険性を上回らない」として承認を拒否。当時はめまいや吐き気、失神、眠気などの副作用で臨床試験を中止するケースが相次ぎ、薬効よりも副作用のリスクのほうが大きいとされたのがその理由だ。
しかしその後、2011年にアメリカの大手製薬会社に権利が売却され、さらに研究を重ねた末に再度FDAに提出。その際も承認を拒否されたが、2015年に3度目の提出がなされ、ついに承認を得る結果となった。
年をとると性欲が衰えることがあるのは、男性も女性も同じ。女性の場合、とくに閉経が近くなると性欲の低下に悩まされるケースが増え、それによるセックスレスが夫婦仲を冷え込ませる原因にもなっていた。
しかしこの「フリバンセリン」は臨床試験に参加した46%~60%の女性は薬の効果を実感したんだとか。これが正式に承認されれば、セックスレスからくる離婚の危機を回避できる夫婦も増えるかもしれない。
もっとも、FDAの諮問委員会も諸手を上げての賛成というわけではなく、今回も賛成18人、反対6人と、反対に回った委員も少なくなかった。また、賛成者にしても全員が副作用を低減させる措置をとることを前提条件としており、必ずしも安全性が確保されたわけではない。
実際にどれほどの効果があるのか、はたまた女性にこっそり服用させるなど薬が悪用されてしまう可能性をどうするのかも気になるところ。しばらくは見守るしかないだろう。
女性版バイアグラ「フリバンセリン」の今後の成り行きに注目したい。