ファンなら誰もがニコニコしながら考えるであろう2015年の『私的プロレス大賞』。さっそく考えたい。なお、自分が直接会場で観た試合から選びます。

●MVP=鈴木みのる(フリー)……「私的」なことを書かせてもらうと、大技がどんどん進化するこのご時世で、シンプルなプロレスをする人たちにあらためて目を奪われた1年だったのです。でもシンプルは難しい。技術と経験と飛びぬけた才能がいる。たとえば、東スポ制定のプロレス大賞・最優秀タッグの「大仁田&長与」組。選出に違和感を表明する声も少なくなかったが、いっぽうでこの2人の間合いを中心に魅せてゆくファイトはずっと見ていたいと実際に感じる。

 そんななか鈴木みのるです。鈴木選手の試合も引きこまれる。自著『プロレスで<自由>になる方法』(毎日新聞出版)によると、どこの団体に行っても控室のモニターで他のレスラーの試合をみながらこう考えているという。

《「コイツ、なんでここまでやって人気ねぇんだろ?」とか、「あれ、なんでこいつ、たいしたことやってねぇのに人気あるんだろ?」とか思うんだけど、見ていくうちに「あ、これだ」っていう発見があるんだ。それが誰も気づかないような細かいポイントだったりすると、得した気になるんだよね。》

 プロレスの奥深さを思い知る一節である。ということで、年間最高試合も『鈴木みのる vs 杉浦貴(NOAH9・19大阪府立体育館)を選びたい。

●新人賞=橋本千紘(センダイガールズプロレスリング)……日本大学レスリング部出身の初の女子プロレスラー。このコラムでいち早く書きましたが、11月のスターダムとの5対5勝ち抜き戦での「3人抜き」は凄かった。勝ちっぷりもいいけど醸し出す雰囲気にやられた。来年も楽しみ。

 ああ、書きだしたらきりがない。鈴木秀樹の時代を超えた重厚さも、柴田勝頼の名勝負の頻発ぶり(充実ぶり)も、いまプロレス界でいちばんガウンが似合うであろう里村明衣子のことも、去年よりも団体を引っ張っていることがハッキリとわかる紫雷イオのことも、休養を逆に「修業期間」にしてほしい飯伏幸太のことも。書きだしたらきりがない。とにかく心に残ったレスラーは多い。

 そして何といっても今年はこれに尽きるだろう。天龍さんお疲れさまでした。2016年もプロレスが楽しみです。

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