競泳・鈴木聡美、リオ内定までの「復活への道」舞台裏の画像
競泳・鈴木聡美、リオ内定までの「復活への道」舞台裏の画像

 4月6日に行われた、リオデジャネイロ五輪の代表選考会を兼ねた競泳日本選手権。女子100メートル平泳ぎ決勝で、鈴木聡美(25=ミキハウス)が、1分06秒72のタイムを出して2位に入り、2度目の五輪出場切符を手にした。

 レースは平泳ぎ200メートル代表の渡部香生子(かなこ)、平泳ぎ200メートル日本記録保持者の金藤(かねとう)理絵と三つ巴の争い。鈴木は折り返しの50メートルまで身体半分の差をつけてトップをキープ。ラスト5メートルで渡部に抜かれたものの、日本水泳連盟が定めたリオ五輪派遣標準記録を突破したのだ。雌伏を経て、五輪代表となった鈴木はレース後、「本心から喜べたのはロンドン五輪以来かも」と笑顔を弾けさせた。

 4年前のロンドンでは、日本の女子競泳選手初となるメダル3個を獲得(女子200メートル平泳ぎで銀、100メートル平泳ぎで銅、400メートルメドレーリレーで銅)。女優の故・夏目雅子さんを想起させる目鼻立ちのクッキリした美貌も相まって、一躍シンデレラガールとなった彼女だが、その後の4年間は苦難の連続だった。「勝って当然」「記録を出して当たり前」というメダリストの重圧から、極度のスランプに陥ってしまう。勝てない、記録が伸びないの悪循環。14年の日本選手権では、4連覇中だった女子100メートル平泳ぎで、当時、高校3年生だった渡部に敗北を喫した。

 また、昨年の日本選手権では50、100、200メートルの3種目にエントリーした鈴木だが、最も得意とする50メートルで渡部に敗れ、100メートルは準決勝で敗退(全体で9位)。200メートルでも惨敗した彼女は、ついに日本代表からも外れてしまう。「私、何をやってきたんだろう……」 プールサイドで、人目もはばからずに号泣したこともあった。「ここ数年、日本女子競泳陣は、若い力の台頭が目覚ましいですからね。平泳ぎと個人メドレーが得意種目の渡部は19歳。バタフライ100メートル、400メートルと800メートル自由形リレー、400メートルメドレーリレーの4種目でリオ五輪代表になった池江璃花子(りかこ)は15歳。200メートル個人メドレーでリオ五輪に出場する今井月(るな)も15歳。鈴木がエントリーする女子平泳ぎも、日本競泳陣で最難関といわれるほど、選手の実力が伯仲しています」(全国紙記者)

 若手の追い上げに焦る気持ちに加え、ロンドン五輪後に取り組んだ泳法改造にも不振の理由はあった。「年々、高速化する平泳ぎに対応するため、鈴木は“膝を閉じた状態でのキック”に、フォームを改良しようとしたんです。しかし結果は、体が沈んでしまい、記録も伸びませんでした。五輪代表選考が近づいた今年2月、神田忠彦コーチと話し合った彼女は、一か八か、ロンドン五輪当時の“膝を開いた状態でのキック”に戻した。すると、泳ぎに力強さが戻ってきたんです」(水泳連盟関係者)

 ギリギリのタイミングで下した決断は、彼女にとって“吉”と出たのだ。力強いダイナミックな泳ぎで“ボンバー”の異名を取った鈴木が完全復活すれば、リオ五輪で波乱を起こす可能性は十分だ。「自分に合った泳ぎを再確認できたことで、鈴木の表情も明るくなりました。ロンドンのときも決してメダルの本命ではなかった彼女ですから、リラックスした状態で本来の力を発揮できれば、番狂わせもありますよ」(全国紙記者) リオ五輪は、吹っ切れた鈴木聡美の泳ぎに注目だ。

本日の新着記事を読む