貴闘力「本当は横綱を育てたいし、その自信もある」~立ち直る人間力の画像
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 ギャンブルで、トータルしたら5億円以上、負けたと思いますよ。1日で、何千万って負けることもよくありましたからね。ボートをやったときは、最初、30万賭けたら、250万になったんですよ。その250万を次のレースで、全部つっこんだら、1400万になった。今でも覚えている。それがボートで1番、勝った日だったんじゃないかな。

 ただ、1400万円なんて2、3日でなくなりますよ。それを1億にしようとして、競馬に賭けたら、すぐになくなる(笑)。そんな大金をどうやって持ち運ぶんだってよく聞かれるけど、当時はゴミ袋に入れて持っていっていた(笑)。俺を見ても、誰も、襲ってこないですしね。

 1年に、60回くらい韓国のカジノに行っていた時期もありました。ほとんど週1ペースですよね(笑)。そこで、バカラをやるんだけど、8000万円くらい勝ったこともある。

 ギャンブルが唯一のストレス解消だったんですよ。酒、たばこ、女はやらないから、1400万円勝ったからって、じゃあ、そのお金で車を買おうとか、夜のお店に行こうとかならない。その金で、また次の日に、競馬やボートに行くのが楽しいんです。結局、なくなるまで賭けちゃうから、絶対に勝てないんですけどね。

 ただね、相撲を辞めてから、飲食店の経営を始めていたんで、やっぱり責任感が出るんですよ。彼らを路頭に迷わすわけにはいかないでしょう。それに、店が赤字だからまわらないのは、しょうがないけど、黒字でまわんなかったら、誰も助けてくれないわけですよ。

 それで、ギャンブルは辞めた。今は、1円も賭けてない。まあ、本音を言えば、またギャンブルをやりたいですけどね(笑)。やったら、カーっとなって、とことんまでやらないと気が済まない性質だから、小遣いの範囲内で楽しむぐらいで、できればいいんですがね。

 だから、今は復帰の途中ですよ。焼き肉店から初めて、半年前に、ようやく寿司屋を出せた。寿司屋って職人がいないとできなかったり、すごく難しいんですよ。ただ、本当は、寿司が一番好きなんです。毎日でも食べたいくらい。

 僕は、九州の育ちなんですが、13歳ぐらいから通っている寿司屋があるんです。たつみ寿司っていうんですが、そこの親父が握る寿司がうまい。頭がやわらかくて、これはこうなんだって決めつけない。だから、寿司によってつけるしょう油が全部違ったりするんですよ。

 常に考えているんですよ。どうやったら、もっとおいしくなるのかってことを。そういう柔軟性が好きなんですよね。職人のこだわりよりも、お客さんが喜んでくれることが一番じゃないですか。うちは、まだ、たつみ寿司のレベルに達してはいないけど、創意工夫しておいしいものを、おいしく出したい。

 ありがたいことに、経営する飲食店は10店舗まで拡大したけど、金を儲けてやろうって考えはないですよ。相撲のときも、そうだったけど。だから、お金に雑なんですよ。結果的に、それがあったから、ギャンブルにバカみたいに大金つぎ込んでしまったのかもしれないけど。

 もちろん、おいしいものを提供して喜んでもらうってのは、楽しいし、好きだけど、本当はモンゴル人を負かすような横綱を育てたいっていう気持ちもありますよ。その自信もあるけどね。でも、それが、できない。悲しいけど、しょうがないですよ。

 今は、お店を全部黒字にしたい。それで、野球だったり相撲だったりで、ダメになってしまった子の手助けをしてあげたいですよ。競技でダメなだけで、商売はうまかったりする場合もあるし。

 僕自身、立ち直っている途中だから偉そうなことはいえないけど、飲食店をやりながら、一度ダメになってしまった子たちの手助けをできればなと思っています。

貴闘力 たかとうりき
1967年9月28日、神戸市兵庫区生まれ。83年夏場所に初土俵を踏み、90年秋場所に新入幕。翌年の名古屋場所で関脇に昇進。93年に大鵬親方の三女と結婚。00年春場所では、前頭14枚目で、史上初となる幕尻優勝を果たす。02年秋場所にて現役引退。大嶽親方として後進の育成にあたるが、10年に野球賭博への関与が発覚し、角界を去る。以後、飲食店経営に乗り出し、現在は10店舖を経営するまでに至る。

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