阪神競馬場に舞台を移して3年目になるG1朝日杯FSが今週のメインだ。興味の第一は牝馬ミスエルテの挑戦。牝馬が勝てば2001年にレース名を変更して以来、初の快挙となる。その可能性もかなり濃いと考えている。

 2戦2勝の戦歴。デビュー戦から次元が違っていた。中団追走から直線で外に持って出ると、持ったまま抜け出してきた。2着馬に2馬身差。ラスト2Fのラップが11秒1-11秒5だ。追っていれば10秒台のラップを連発していただろう。

 2戦目も強かった。スタートで遅れて殿追走。4角でも、まだ10番手の後方(12頭立て)にいたが、直線入り口でエンジンがかかるとノーステッキでゴボウ抜き。3F33秒6はもちろん最速上がり。他馬とは切れ味が違いすぎた。

 スタートで遅れたのは、「横を向いたときにスタートを切られた」と川田だが、深謀をめぐらしていたようだ。1枠1番でスタートを出せば、そのまま7Fのペースでの競馬になる。次走にG1のマイル戦を控える立場からは避けたい展開。つまり、ゆっくりスタートを出すことで、1頭だけマイル戦に近いレースをしたということ。それでも勝てると鞍上に確たる自信があったのだろう。ミスエルテはそれほどの器なのだ。

 牝馬は3年前の中山でベルカントが挑戦して10着に敗れているが、現在の舞台は外回りの阪神。末脚が武器のミスエルテには何よりの好材料。デビュー戦で経験した舞台でもある。まだ図抜けた素材がいない2歳牡馬陣だけに、今年は牝馬勝利の最大のチャンスだ。

 興味の第2は武豊のG1完全制覇がなるかだ。昨年はエアスピネルで2着に敗れたが、今年はタガノアシュラで偉業に挑む。

 チャンスなしとしないのは、その先行力だ。デビュー戦、3走目の前走と、逃げると強さを発揮するタイプ。ワンペース型だが、容易にバテない粘り強さもある。問題は同型、トラストの存在。ベストは逃げる形だから、前半ペースが鍵を握ってくる。

 人気を集めるのはモンドキャンノだろう。デビュー勝ちのあと、函館2歳S2着、前走の京王杯勝ち。まだ底を見せていない。

 しかし、食い足りないのはマイルの距離を経験していないこと。先週の阪神JFでも述べたが、阪神マイル戦ではマイル以上の距離経験が勝ち馬には求められるからだ。それならまだ伸びシロがある音無コンビが怖い。レース巧者のアメリカズカップも連有力だが、ダンビュライトの骨太なレースぶりに魅力がある。(日刊ゲンダイ大阪記者)

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