専業主婦は楽じゃない!平均的な生活とデメリットの画像
専業主婦は楽じゃない!平均的な生活とデメリットの画像

 ひと昔前までは妻や母親が専業主婦という家庭は決して珍しくなかった。しかし最近では専業主婦は減少の一途をたどっているようだ。そして一部の女子にとって、専業主婦は一握りの選ばれた女性だけがなれる憧れの存在になっているらしい。そこで今回は、専業主婦の実態を明らかにするためにさまざまな角度から調べを進めてみた。

■専業主婦、世の中にどのくらいの割合がいるの?

 まず2017年現在、日本全国に専業主婦と呼ばれる妻たちがどのくらいいるのか調べてみた。

●専業主婦世帯数の推移

 2016年の共働き世帯は1129万世帯で、専業主婦世帯は664万世帯であった。しかし1980年では、共働き世帯が614万世帯で、専業主婦世帯が1114世帯だった。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構、専業主婦世帯と共働き世帯より)

 少子高齢化や未婚率の増加などさまざまな問題が絡み合っているため一概には言えないが、数字だけみれば、この35年間に日本の専業主婦世帯と共働き世帯の数は見事までに逆転し、専業主婦世帯は減少していることがよく分かる。

 また、2016年の総世帯数は5695万(総務省、住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数より)なので、単純に割ると総世帯数の16%が専業主婦世帯となる。

●女性の年代別、有配偶者の非労働力率

  • 20〜24歳 96%
  • 25~29歳 78.7%
  • 30~34歳 62.3%
  • 35~39歳 54.2%
  • 40~44歳 48.8%
  • 45~49歳 44.2%
  • 50~54歳 42.9%
  • 55~64歳 55.4%

(内閣府男女共同参画局、男女共同参画白書 平成28年度版より)

 一般に、若い世代の既婚者ほど専業主婦の割合が高く、50代前半までは年代ごとに専業主婦の割合が低くなり、50代後半から再び専業主婦の割合が増えていく傾向が認められる。

●県別の専業主婦の割合

一般世帯における、共働きの世帯の割合が少ない都道府県の順位

  • 1位 東京都  17.74%
  • 2位 大阪府  21.24%
  • 3位 北海道  21.24%
  • 4位 神奈川県 21.39%
  • 5位 福岡県  21.82%
  • 6位 沖縄県  22.35%
  • 7位 京都府  22.49%
  • 8位 兵庫県  22.74%
  • 9位 奈良県  22.98%
  • 10位 千葉県 23.54%

(総務省統計局、統計でみる都道府県のすがた2017より)

 政府が2017年に公表した統計資料を参考に、専業主婦世帯の割合が高い都道府県を挙げてみると、東京都、大阪府、北海道、神奈川県、福岡県の順になる。専業主婦世帯の割合が高い都道府県は、労働者1人あたりの収入が多い傾向にある。

●世界的にはどうなの?

 専業主婦の割合についての世界的な統計はないが、北ヨーロッパを中心としたヨーロッパにおける専業主婦率が低いのはよく知られている。スウェーデンの専業主婦率はわずか2%(2011年、20~64歳女性のうち、家事が主務の人の割合、NIKKEI STYLEより)であり、フランスでも25~54歳で働いていない女性は16%(ハフィントンポストより)に過ぎない。

■専業主婦に必要な、夫の年収とは!?

 それでは妻が専業主婦でいるためには、夫にどれくらい稼いでもらえばいいのだろうか?

 専業主婦に必要な夫の年収は、夫婦の年齢や子どもの数、持ち家なのか賃貸なのかなどさまざまな要因に影響されるため、一概にいくらと言うのは難しいが、2人以上の世帯における平均収入は43万7,497円で、平均支出は26万8,802円(総務省統計局、2017年9月分速報より)となっている。これを単純計算してみると、1世帯当たりの平均年収は約525万円で、平均支出は約323万円になる。数字だけを見れば、夫の年収が525万円あれば専業主婦になれそうな気もするが、将来への貯金はもちろん、子どもの有無や年齢も加味しなければならないだろう。そうすると専業主婦でいるためには、子ども1人につき年間支出はざっくり100万円ずつアップすると考えた場合、夫の年収は最低でも以下ぐらいは必要になる。

  • ・夫婦のみの2人家族:550万円
  • ・夫婦と子ども1人の3人家族:650万円
  • ・夫婦と子ども2人の4人家族:750万円

■専業主婦は本当に暇なのか

 テレビドラマや漫画などフィクションの世界で描かれる「専業主婦」には、朝から晩までリビングに座り込み、お菓子を食べながらテレビを見ているなど、非常に暇そうなイメージがある。実際のところ専業主婦は本当に暇なのだろうか?

●子どもがいないケース:A子さんの場合

 子なし専業主婦は、午前中に家事や食事の支度をすませてしまえば、あとは夫が帰宅するまで自由に時間を使うことができる。また夫が休みの日は気軽に外食や旅行に行くこともできる。

  • 6:00  起床・朝食作り
  • 7:00  夫を起こして朝食
  • 7:30  夫を見送った後に、洗濯や掃除などの家事
  • 11:00 フリータイム
  • 12:00 昼食
  • 13:00 フリータイム
  • 16:00 買い出し
  • 17:00 夕食作り
  • 19:00 帰宅した夫と夕食
  • 20:00 後片づけ
  • 21:00 入浴
  • 22:00 フリータイム
  • 23:00 就寝

●子どもがいるケース:B美さんの場合(就学前の子ども2人)

 子あり専業主婦は育児に追われるため、ほとんど自由時間がとれないほど忙しい。夫が休みの日も育児は休めない。

  • 5:00 起床・朝食と弁当作り
  • 7:00 夫を起こして朝食
  • 7:30 夫が出勤
  • 8:00 子どもを起こして朝食
  • 8:30 洗濯や掃除などの家事
  • 10:00 子どもと公園など・買い出し
  • 12:00 子どもと一緒に昼食
  • 14:00 子どものお昼寝
  • 15:00 フリータイム
  • 16:00 夕食作り
  • 17:00 子どもの夕食
  • 18:00 子どもの入浴
  • 19:00 帰宅した夫と夕食
  • 20:00 子ども就寝・後片づけ
  • 21:00 入浴
  • 22:00 フリータイム
  • 23:00 就寝

 子どもがいない専業主婦には時間的な余裕があるが、子どもがいる専業主婦は決して暇とは言えないのである。

■専業主婦が苦労すること

 では専業主婦として生活する際のデメリット、抱えてしまいやすい苦労には、どんなことがあるのだろうか?

●自分の収入がない

 専業主婦の苦労として一番最初に挙げられるのは、やはり自分でお金を稼いでいないため、金銭的な自由度が少ないことだろう。夫や子どもなど家族に関係ない、自分のためだけの出費がしづらい傾向にある。しかし年収がゼロ円だからといって、クレジットカードが作れないということはない。カードによっては夫の勤務先や年収を入力する必要があるが、その場合は夫の情報を元にカード審査が行われ、信用できると判断されれば発行してもらうことができる。ただし、専業主婦の場合は限度額が10~30万円程度、キャッシング枠はゼロとなることが多い。また申し込み時に高めの限度額やキャッシング枠を要求すると審査が厳しくなるため、最低限の金額で申し込んだほうが通りやすい。

●育児

 専業主婦は家事や育児をすべて1人でこなすことを求められることが多い。しかも完璧にできて当たり前という風潮もある。家事はともかく、子育ては想像以上に大変な重労働である。子どもは自分の思い通りにならないため、逃げ場のない専業主婦はストレスやつらい想いを抱え込んだあげく、思い詰めて育児ノイローゼになってしまうことも珍しくない。

●平均的な外出の頻度とは

 子どもがいる専業主婦だと、周囲の理解や協力が得られないかぎりは、夫や子どもと離れて1人で外出する時間を作るのはかなり難しい。子どもが就学する前は2、3か月に1度のペースで美容院に行くのが精一杯という妻も多い。しかし子どもが就学すれば、平日のランチなどは外食しやすくなるだろう。

■専業主婦でも、収入は必要か?

 専業主婦の場合は、夫の不幸が貧困に直結してしまうことが非常に多い。そのため夫に十分な収入があったとしても、万が一のときのために妻が再び働きに出るケースは少なくない。夫が会社員で年収1000万円以下の場合、妻の年収が103万円以下だと「所得税」が免除されて税金が安くなる「配偶者控除」という制度が適用される。そのため収入を調整しながら働いている妻が多い。

 専業主婦が再び働きに出るときは、まずはパートからスタートするのが大半なようだ。では専業主婦が仕事復帰を始めるのはいつからなのだろうか? 行動が早い妻だと、子どもが保育園や幼稚園に入園することが決まったら、すぐに履歴書を書いて面接の準備を始める。しかし最も一般的なタイミングは、履歴書の志望動機の欄に「子どもが就学したから」と書ける小学校の入学時である。子どもが小学校高学年に入る頃からパートの時間を増やしてフルタイムで働く妻が多くなり、中高生になる頃には正社員や派遣社員として社会人復帰しているのが理想的なようだ。

■専業主婦の年金制度

 専業主婦は年金制度においてメリットがあることはよく知られているが、具体的にいくらもらえるのかまで把握している人は少ないかもしれない。夫が厚生年金に加入している場合、専業主婦は保険料を支払わなくても年金がもらえる「第3号被保険者」という資格を得ることができる。しかし妻が働き始めて年収130万円以上になると、夫の扶養から外れてしまうため、この資格を失ってしまう。「第3号被保険者」は国民年金を全額収めたのとまったく同じ扱いになり、基礎年金をもらうことができる。たとえば40年間「第3号被保険者」だった専業主婦が2017年度にもらえる年金額は、基礎年金の満額である77万9300円になる。1か月あたりにすると、約6万5000円を受給できる計算だ。この金額を少ないと思うか多いと思うかは人それぞれだが、決して暮らしに十分な額とは言えないだろう。

■まとめ

 夫をしっかり支え、子どもとしっかり向き合うことができる専業主婦。しかし、その平均的な生活やデメリットを見てみると、専業主婦は決して楽なだけではないことが、お分かりいただけただろう。あなたはそれでも専業主婦を選びますか?

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