一つ一つのレースを大事に乗ろう――気持ちも新たに臨んだ10月最終週の重賞レースは、白と黒に色分けされてしまいました。

 最高に気持ちのいいレースだったのは東京、土曜のメインレース、ギリシャ神話に登場する狩猟と純潔の女神からその名前をいただいたアルテミスステークス。阪神JFの前哨戦として2012年に新設された2歳牝馬たちによる戦いです。このレースで僕のパートナーを務めてくれたのは、G1・2勝のソウルスターリングを半姉に持つ、藤沢和雄厩舎のシェーングランツでした。この馬に跨ったのは返し馬のときが初めてで。

――すごくいい感じやな。馬体。雰囲気。弾むようなフットワーク。なぜ、この馬が6番人気なの? 首をひねりたくなるほどでした。ところが。ゲートが開くと反応はイマイチで。道中も、走りたくてしょうがないという感じがまるでありません。

――あれっ? これは期待はずれだったかな。と思ったそのときでした。直線で外に出すと、フォームも、背中から立ち上る気合も、醸し出す雰囲気もまるで違う馬に変身。ライバルたちが止まって見えるほどの異次元の末脚でゴール板を駆け抜けました。ジョッキーが使う表現として、ギアチェンジしたとか、もう一つのエンジンが点火したとかいう言葉を使いますが、そんなものではありません。フツーの女の子が、ヒロインに変身する人気アニメのような変わり方です。

 藤沢厩舎の馬に乗せていただくのは久しぶりでしたが、さすが、藤沢厩舎です。この先、自由自在に変身するタイミングを身につけることができたら、もしかしたら、とんでもない馬になるかもしれません。

■天皇賞(秋)はダービー馬マカヒキに騎乗も

 一転したのは、翌日曜日に行われた天皇賞(秋)のレースでした。騎乗依頼をいただいたのは、一昨年のダービー馬、マカヒキ。ジョッキーとして、これ以上名誉なことはありません。

 枠順確定後は寝ている間も、レースのことを考え続けていました。先行馬不在ということは、どう考えてもスローペースになるはずや。いや、でも、こういうときに限って、速くなるのも“競馬あるある”や。

 あれこれ頭に思い描き、準備万端でレースに臨んだはずでしたが、終始、緩みのない流れで進んだ展開はマカヒキに味方をしてくれませんでした。結果は、昨年のダービー馬、藤沢和雄厩舎のレイデオロが優勝。またしてもルメールに持って行かれてしまいました。この借りは、今週の競馬できっちりお返ししたいと思います。

■G1レースで“競馬あるある”を!

 10日土曜は、ヤマニンマヒアでG3デイリー杯2歳S。11日日曜は、スマートレイアーとコンビを組んでG1エリザベス女王杯。復活劇や、大番狂わせがあるのも、“競馬あるある”の一つです。

――レースは結果がすべて。勝ちにこだわって、目の前の戦いに臨みます。

あわせて読む:
・「パチンコ等価交換」県の“激アマ実態”