競馬の騎手になりたい、なろう、と決めたのは中学生のとき。周りはすべて競馬関係者で、朝の調教を終えた馬たちが、厩務員さんに手綱を引かれてのんびりと歩いているような環境だったので、覚悟というより、それが自然の流れでした。
そのときに掲げた大きな夢が、いつか日本ダービーに勝って、“ダービージョッキー”と呼ばれること。
晴れてジョッキーとなり、海外の競馬を体感して抱いたのが、凱旋門賞に勝ちたいという強い思いです。こちらはまだ実現していませんが、いつか必ず、と思い続けています。
では、その次に勝ちたいレースはというと、G1制覇コンプリートまであと2つ――朝日杯FSとホープフルSは勝っておきたいし、天皇賞も、有馬記念もまだまだ勝ちたい。海外に目を移すともう、あれもこれもと数限りなく増えていきます。その中で、一つに絞ると、日本で初めて国際G1となったジャパンCになります。
――世界的な名馬と世界のトップジョッキーが、日本にやって来る。そのニュースを聞いたときのドキドキは、今でもはっきりと覚えています。
11月28日に行われたそのジャパンCで、僕はエイダン・オブライエン調教師の馬、ジャパンで、参戦させていただきました。世界的大種牡馬ガレリオ、2000年の欧州年度代表馬ジャイアンツコーズウェイ、02年に当時、世界記録となるG17連勝ロックオブジブラルタルなど、これまでに育てた名馬は数知れず。クールモアに認められ、16年の凱旋門賞では1~3着を独占した、あのエイダン・オブライエンですから、興奮するなというのが無理な話です(笑)。狙ったのは、05年のアルカセットを最後に勝っていない外国馬の勝利です。
結果は8着。勝ったのは、ユーイチ(福永祐一)が乗った三冠馬コントレイルです。引退するのがもったいないと思わせるほど、とにかくもう、メチャクチャに強い競馬でした。
おめでとう、ユーイチ! 負け惜しみになりますが(苦笑)、スペシャルウィーク(99年)、ディープインパクト(06年)、ローズキングダム(10年)、キタサンブラック(16年)に続く5度目の制覇は、優勝賞金が1億円アップし、4億円となる来年に取っておきます。
それでは、今週の騎乗馬です。師走第2週となる今週末のメインレースは、2歳牝馬女王決定戦、G1阪神JFで、僕がコンビを組むのは武幸四郎厩舎のウォーターナビレラです。
新馬、サフラン賞(1勝クラス)に続き、重賞初挑戦となった前走GⅢファンタジーSを勝って、目下3連勝中! この勢いで、兄弟でのG1制覇を目指します。
前走より距離は1F延長となりますが、それは大きな問題ではありません。スタートがいいし、レースセンスも抜群で、折り合いもつくタイプなので、楽しみしかありません。期待して見ていてください。
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