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【常夏の国の怖い話】 2/4話

2014-09-16

岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー

先日、東南アジアの某国で聞いた話だ。日本のテルテル坊主を気に入っているという女性の話である。

その国にも、晴れを願うおまじないはある。東南アジアで、料理によくつかわれるレモングラス。
その葉を三本束にし、根の方を上に、葉の方を土に埋める。
ここまではその国全般で共通している作法だが、それに願をかける人が地方によって異なる。

未亡人でなきゃ効果がない、末の女の子でなければよけい雨が降る、などなど。
彼女の生まれ育った地方では、処女でなければならなかったという。

「すぐ上の姉の結婚式を、屋外の会場でやることになって。前日にレモングラスのおまじないをすることになったんです。そのとき家にいる処女は、私だけだった。

 ……ってことになってましたけど。実は私、もう処女じゃなかったんです。
おまじないのレモングラスは、私が埋めたんですが。
もう、泣きたかった。
絶対におまじない、効かないって。
姉の結婚式が台無しというより、処女ではないのがばれるのが怖かった。

そんなとき、日本人がよく来るレストランで働いていた従姉が里帰りしてきました。
従姉に、日本のテルテル坊主の話を聞いたんです。私、レモングラスを埋めた後でこっそりテルテル坊主を作って、そっちの方に祈りましたよ。
それがよく効いちゃったんです。

当日、素晴らしい晴天になったんですよ。
あんたのおまじないが効いた、って姉も家族もみんな喜んでくれました。

それから、あの子のおまじないは効くっていうんで、いろいろなところからレモングラスのおまじないを頼まれるようになったんです。いつもテルテル坊主に祈ってますよ。

清き処女がわが国の古来からのまじないをしてるんじゃなくて、ヤリヤリの非処女が異国のおまじないをしてるんです。これもバレたら、怖いです」


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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