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【常夏の国の怖い話】 3/4話

2014-09-23

岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー

先日、東南アジア某国で会った日本人の彼は、もう時効だからと笑って話してくれた。

「今日みたいにクソ暑い日。地方のホテルに泊まって、クスリをキメてからベッドに転がってうとうとしていたら、見知らぬ女がいきなり部屋に入ってきた。
僕はクスリのせいだけじゃなく身動きできなくて、ただじっと女を見ているしかできなかった。

女はごく自然に服を脱いで、シャワー浴びたりてた。実にいやらしい、いい体をしていたよ。
顔もタイプだった。
でも僕のことは完全に無視。
いないものとしている。
いや、本当に僕が見えてなかったみたいなんだ。

なんていうかこの部屋の本当の主っていうか、彼女こそがこの部屋に宿泊している客で、僕が勝手に人の部屋に入ってるような感じになってきた。

だから、お前は誰だともいえず、こちらが『見つかるとヤバい』みたいに大人しくしてた。
でも、裸のままで股を広げたり自慰みたいな真似もしたり、興奮させられたなぁ。

それから女は、入って来たときと同じように自然に部屋を出て行った。

怖い話にもっていけるけど、あれはクスリの幻覚、と片づけてその話は忘れるようにした。
それからずいぶんと年月が経って、初めて会うけど同じ業界の女性に会ったら。
なんとなく、お互いに初対面ではない気がした。

いろいろ話していたら、彼女もあの国のあのホテルに泊まっていたのがわかった。
そのホテルで不思議な体験をしたんだって。
部屋に戻ったら、見知らぬ男がベッドで寝ていた。
明らかに、この世のものではない感じだった。

でも怖いから、ずっと知らん顔をしていたそうだ。それ、僕じゃないの」

……あなた達、あのときもその後もやりましたね。とは、私にはいえなかった。


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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