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知識のない人にモノを伝える方法は、プロレスから学ぶべし。

2014-09-06

プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

アントニオ猪木が 北朝鮮・平壌で開催したプロレスイベント「インターナショナル・プロレスリングフェスティバルin平壌」(30~31日、平壌・柳京鄭周永体育館)。

一般のニュースとしても大きく取り上げられたが、ここでは別の角度からこのイベントを考えてみたい。なるほど、と感心したことがあるからだ。

「まったくプロレス知識のない人々に、どう伝えるか」という原点が興味深かった。

かつて力道山は日本にプロレスを紹介したとき、相手に「シャープ兄弟」というアメリカの大きくて技巧派の選手を選んだ。敗戦後まもない日本人の観客は力道山の「打倒アメリカ」に、それはそれは興奮したらしい。

猪木が初めて北朝鮮でプロレスイベントをおこなった1995年。現役だった猪木はメインイベントで自らリック・フレアーを迎え撃った。日米を代表するミスタープロレス同士がおこなう試合は「テッパン」だったが、それにプラスして、金髪をなびかせる「悪の枢軸」アメリカ人・フレアーの動き一つ一つには、プロレスを初めて観る北朝鮮の観客にもどんどんひきこまれていった。そのフレアーを制裁する猪木。猪木は北朝鮮で力道山になったのだ。

そして19年後の今回。猪木・フレアー戦を知らない世代も多い北朝鮮の国民に「プロレス」をどう伝えるか。

猪木は、バスを引っ張らせたのである。

平壌市内に約500人の観衆を集め、ボブ・サップらが大縄につながれたバスを引っ張るパフォーマンスをおこなった。興味津々の市民の前で3人で縄を引っ張るとバスが動き、拍手喝采となったという。

このパフォーマンス、53年前の伝説的なアレと同じだ。

1961年、来日したグレート・アントニオが神宮外苑で満員の大型バス3台を引っ張った。「ワールド大リーグ戦」を盛り上げるために日本プロレスが仕掛けたこのパフォーマンスはその後も語り継がれた。

プロレスを知らない人にまずその凄さを伝えるとしたらレスラーの怪物性、異形性であり、つまり「非日常の世界」である。

53年前のグレート・アントニオの怪物性を今回はボブ・サップが担ったことになる。

《さらにサップは即席の腕相撲大会を開き、挑戦者を募集。8歳の男の子にはメンチを切り「ウガー!」と奇声で震え上がらせ、腕相撲では瞬殺…と大人げない。16歳の少女にも同様に奇声を発したが、頭を叩かれる反撃にあい、平壌市民は手を叩いて大喜びだった。 》(東スポweb 2014年08月30日配信)

北朝鮮の市民はまずサップの肉体に驚き、そのあとの緩急混ぜたサップのエンターテイナーぶりにコロリとやられたのだろう。サップの顔芸が目に浮かぶ。

知らない人にモノを伝える際のベタの重要さ、人選。今回の北朝鮮での猪木のイベントには、あなたもビジネスできっと役立つであろうヒントがたくさん詰まっていたのである。たぶん。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

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