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第23回 「アイス・バケツ・チャレンジ」のセレブが知らないALSの真実

2014-09-11

歌舞伎町案内人 李小牧が暴く!日本人は知らない「中国ニュースの裏側」

この夏、バケツに入った氷水を有名人が頭からかぶる「アイス・バケツ・チャレンジ」という行為が全世界で大流行した。普段はチャリティやユーモアが大好きな私だが、この「氷桶挑戦(中国語で「アイス・バケツ・チャレンジ」はこう書く)」には複雑な気持ちだった。それには理由がある。次の文章を読んでほしい。


私の母親はずっと健康で、出産以外は病院に通ったことのない人だった。90歳まで生きると思っていた彼女は2003年、67歳のある日突然歩けなくなった。腰の手術を受け、3カ月寝たきりになったが、3カ月経っても容態は良くなるどころか悪化の一途をたどり、車いすが必要になった。(中略)母親はあっという間に衰弱し、そのうち手も動かなくなった。05年末にようやくALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された時には、発病から2年が経っていた。(後略)


これは、私の中国人の妻が中国版ツイッターの新浪微博に投稿して、大反響を呼んだ文章だ。彼女の母は当時南京に住んでおり、日本で私と結婚していた彼女は「夫をとるか、母親をとるか」の選択を迫られ、結局、難病に苦しむ母親の看病のため、帰国する道を選んだ。こうして私と彼女はいったん、離婚することになった。私にとって、ALSは決して他人の病気ではない。

彼女はこの文章で、
「ALSは発病率が低いため、多くの医者がこの病気について理解していないため、誤診されやすい。そのため、病気の進行を遅らせる薬を投与する貴重な時間が失われてしまう」
と訴えている。確かに、氷水をかぶる行為もALSという病気を知ってもらうきっかけにはなるだろう。ただし、はしゃいでいたセレブたちは、どれだけALS患者や家族の苦しみについて理解していたのか。

そもそも中国では、ALSのような難病の治療に公的な医療保険は使えない。難病に公的保健を使えるようにすると、請求が殺到してカネが足りなくなり、財政が破綻するからだ。医療に使える税金が十分でないから、救急車も有料だ。

彼女の母親はやがて、自力で呼吸や食べ物を飲み込むこともできなくなり、苦しみながら06年10月に死去した。氷水をかぶった有名人には、ぜひALS患者と家族の苦しみや、中国の貧しい医療体制についても知ってもらいたいと思う。


李 小牧(リー・シャム) プロフィール
1960年8月27日
中国湖南省長沙市生まれ
バレエダンサー、文芸新聞記者、貿易会社などを経て、留学生として来日。東京モード学園に入学する。ファッションを勉強する傍ら、新宿・歌舞伎町に魅了され、「歌舞伎町案内人」として活動。ベストセラーとなった『歌舞伎町案内人』(角川書店)などを上梓し、執筆や講演活動を展開している。マスコミ登場多数。

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