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【すれ違った女達】 1/4話

2014-11-04

岩井志麻子のあなたの知らない路地裏ホラー

私も、その事件は覚えていた。二十年以上も昔のことになるが、当時はかなり大々的報じられた。だからタレントの秋絵(仮名)がその話を始めたとき、「えーっ、あの事件の関係者に会えるなんて」といってしまったが、正確には秋絵は関係者ではない。

事件とも事件の関係者とも、何の接点もない。

しかし本人がいうように、やはり秋絵は深くかかわっていたのだろう。秋絵は今は家庭的にも恵まれているし、中年を過ぎても艶やかな美人だ。そして本人も隠していないし、周りではかなり知られているが、家出同然に上京してきて、売れなかった時期は苦労もしたし水商売などもしていた。

それでもこつこつ地道に夢に向けて努力もし、そんな本人の頑張りもちろん大きいが幸 運や良い出会いにも恵まれ、今の地位を築いたのだ。

そんな秋絵が、「お守りのような神様のような……取り憑いている悪霊のような」とい う女がいる。ここでは、その女を仮にミリアとしておく。

ミリアは今から二十年以上も昔、ある殺人事件の被害者となった。いわゆるSM趣味の 客を相手にする風俗嬢で、客の一人に殺された。

妊娠したと迫ったからだとも、男の会社に性癖をばらしてやると脅したためともいわれている。
真相は今もって、謎だ。

今現在、あくまでもライトなSMは市民権を得た感ありだが、あの時代はかなり特殊な 分野と見られていた。

確かに、会社員の立場からすれば脅しの材料にはなったと思う。

いずれにしてもミリアはホテルで絞殺され、二カ月ほど経ってから半ば白骨化した無惨 な遺体として樹海で発見された。

その客は、別の風俗店の女も殺していた。


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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