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【すれ違った女達】 3/4話

2014-11-18

恐怖とエロスの貴婦人 岩井志麻子の 路地裏ホラー

今は人気タレントの秋絵は、芸能界での成功を夢見て風俗店の客に無残に殺され樹海に捨てられたミリアとは、現実にはまったく何の接点もない。

二十年以上も、昔。同じ時期に二人とも芸能人を夢見て、都内にいたようだが。東京は広い。故郷も違うし、学校や職場も交友関係もまったく別で、接触していた可能性はゼロに近い。

けれど事件報道を見たときから秋絵は、「この人と自分は、なぜかわからないけど人生が入れ替わった」と思えて仕方なかったのだという。確かに、上京するまでは似たような境遇だった。

秋絵もなかなか芽が出ずお金に困ったとき、風俗をやろうかと面接を受けに行ったこともある。客こそ取らなかったが、店のスタッフにエロな講習も受けた。

「今もはっきり覚えているのが、風俗店の店長さんね。『あんたはこの仕事に向いてない。この仕事が悪いというんじゃなく、あんたには合わない。そんだけだ』といって断られたの。でもミリアは風俗やっちゃって、どっふり浸かった。彼女も風俗は向いてなかった、合わなかったはずなのに」
ともあれスタートは同じようだったのに、途中から大きく差がついてしまった。

それを秋絵は決して、自分は才能があったとかミリアは身の程知らずだとかいわない。
「すべては、紙一重なんだと思う」その店長ではない男にあたっていたら、秋絵も風俗嬢になっていたかもしれない。

それこそ、そこで運命は変わっていたはずだ。そしてミリアがその店長にあたっていたら、風俗嬢にならなかったかもしれない。

……今さら、何をいっても遅いけれど。
「樹海で腐っていくミリアを想像すると、ふっと自分の顔になってしまうときがある」


岩井志麻子(いわい しまこ) プロフィール
1964年12月5日生まれ
A型
高校在学中の1982年、第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年『ぼっけえ、きょうてえ』が選考委員の絶賛を受けて、日本ホラー小説大賞 を受賞。 半生を赤裸々に語るトークや「エロくて変なオバチャン」を自称する強烈なキャラクターが注目を集める。

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