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【武豊】スタッフの努力に応えるのが騎手です

[週刊大衆11月3日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
スタッフの努力に応えるのが騎手です



秋の東京開幕を飾るGⅡ「毎日王冠」を快勝。春は思うような成績が残せず、夏はケガでお休みと、ここまで、地下深くに沈み息苦しさを感じていましたが、この勝利で再び地上に浮かび上がることができました。

僕が騎乗したエアソミュールは8番人気。
とにかく気性の激しい馬で、それがそのまま成績に直結していたような気がします。
「掛からなければ、もっと上で戦える馬なのに……」

誰もがそう思っている素質の持ち主でした。

しかし、人間もそうですが、持って生まれた性格というのはそんなに簡単に変わるものではありません。怒りっぽい人は、いくつになってもカリカリしているし、頑固な人は、容易に人の話に耳を貸しません。

なだめ、すかし、ときには叱りながら毎日少しずつ、矯正していく――根気のいる仕事で、しかもそれだけの努力を続けても、100%解消されるということはまずありません。

騎乗する上で、大事なのは一つだけ。
――掛かったときに、抑えきれるかどうか。
戦術や戦法を考えるのと違い、騎手にできることはそれほど多くはありません。

最初に、ん!?と思ったのは、返し馬のときです。彼とコンビを組むのは、1年10か月ぶりでしたが、以前とは明らかに馬の落ちつきが違いました。

ゲートを出て、中団の内側につけたときも、そのままの位置で我慢させたときも、ギリギリのところで馬自身がなんとか我慢を続けてくれました。

ここまで持ってきてくれたスタッフの努力は、並大抵のものではなかったはずです。そして、それに応えるのが騎手の仕事です。

直線に入ってなかなか前が開かず、ハラハラした方もいると思いますが、ここが度胸の据えどころです。
――必ず、前は開く。

たとえそれが馬半頭分であっても、目を凝らしていれば、勝利への扉は開きます。

GOサインを送った後、グイッと抜け出し、そこからさらにもう一段伸びたときには勝利を確信していました。
――この馬は気性が難しいから。
その一言で片づけるのは簡単です。でも、今回の勝利は、それをわかってあげた上で、コツコツと努力を積み重ねた角居厩舎スタッフの勝利です。

翌日の京都は台風のために順延。3日間開催が変則の4日間開催となり、火曜日に行われたGⅡ「京都大賞典」では、連覇を狙ったトーセンラーは3着に敗れてしまいました。
ただし、こちらは敗因がはっきりしているので、本番、11月23日に行われるGⅠ「マイルCS」に向けては、それほど心配していません。

さらにこの日は、先輩、岡部幸雄・元騎手を超えるJRAの歴代最多騎乗記録(1万8647回)を更新することができました。
――また武豊が勝ったよ。
この秋は、春と夏の分も含め、何度もそう言っていただけるように頑張ります。


■武豊 プロフィール
1969年3月15日、京都生まれ。1987年の騎手デビュー以後、通算3500勝、日本人騎手初の海外GI制覇、年間200勝突破など数々の金字塔を打ち立て、現在も活躍中。

【武豊】スタッフの努力に応えるのが騎手です

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