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耐えて勝利を掴む『人間力』 棚橋弘至(プロレスラー)

[週刊大衆12月15日号]

耐えて勝利を掴む『人間力』 棚橋弘至(プロレスラー)

「プロレスは、攻撃に目が行きがちですが、実は、やられてもやられても、めげずに立ち上がるスポーツなんです」

小中高と、甲子園を目指す野球少年でしたから、将来は、プロ野球選手になりたいと思っていたんです。しかし、気がつけば、プロレスラーになってしまいました(笑)。
ある時、甲子園にも行けず、レフトで7番の普通高校の選手だと、プロは現実的ではないことに気付いたんです。そこで大学受験は、野球を扱う側の例えばスポーツ紙の記者になりたいと思い、社会学部とかマスコミ関係の学部を受験しました。最終的に受かった大学で1番良かったのが立命館大学の法学部。そこで、人生が変わりました。

入学式後に、サークルや体育会系の勧誘があるんです。一番目立っていたのが、学生プロレスのブース。勧誘の学生が派手なマスクを被り、入場曲をガンガン流しているわけです。プロレスを見るのは好きだったので、興味本位で話を聞き、気がついたら入部していたんです(笑)。
プロレスを知って、初めて、こんな面白いジャンルがあるんだって。
すると、自分でもビックリするようなことをしていたんです。他愛もないことですが、プロレス雑誌を買う。試合をビデオに撮る。普段の生活が、すごく充実して、楽しくなった。
好きなことをやり続けるために、努力もしました。僕は入学当時、痩せていたので肉体改造をし、体重も増やさなければならなかったんです。高価なプロテイン代や大量の食費を稼ぐため、いろいろとアルバイトをしました。1食2、300円の学食を毎食1000円分、吐きそうになりながら食べていました(笑)。結果、65キロだった体重が1年で82キロまで増えて、それがまた嬉しくて。

ただその後、入団テストにやっとの思いで合格し、プロレスラーになったはいいものの、当時はK―1全盛期で、お客さんもどんどん減っていく時代でした。
今でもそうかもしれませんが、プロレスって血が出たり、怖いイメージがあったんです。それで観客が減ったのであれば、女性でも子どもでも楽しめるようなものに変えていこうと考えたんです。でも、旧来のファンの方々からは、今までの伝統ある新日のスタイルを変えていくことで大きな反発を受けまして。
リングにあがったら、ブーイングの毎日ですよ。アントニオ猪木さんのように"燃える闘魂"なんて呼び名を誰も付けてくれなかったので、自分で勝手に"100年に1人の逸材"ってつけました(笑)。自分で自分の呼び名をつけるってプロレス史上初なんですけど、それを発表したとき、会場がシーンって静まりかえっちゃいましたね(笑)。
そんな状況でも、プロレスを続けてこられたのは、ぼくは他の選手とプロレスの原風景が違うからかなと思っています。学生プロレス出身なので、苦しいとか仕事って感覚以上に、楽しいって思いが優先される。それに、落ち込んだり、イライラしている時間が僕は人生の中で一番無駄だと思うんです。そんな時間があるなら、ベンチプレスの1回でも上げたほうがいいなと。

プロレスって、攻撃に目が行きがちですが、実は、やられてもやられても、諦めずに立ち上がることが、かっこいい競技なんです。
レスラーは日々、攻撃や受けのための技術を磨き、合わせてそれに耐えうる肉体を鍛え上げています。試合では、観客と一体になり、または対話をしながら究極のエンターテインメントを作り上げていきます。そして、その終着点として、すべてのレスラーが目指す勝利に向け、死闘を繰り広げ戦うんです。
その結果、負けたとしても、それをきっぱり忘れ、次の目標に立ち向かっていきます。と言っても、年間130試合するので、落ち込んでいる場合じゃないんです(笑)。
僕の試合を見た人が楽しみ、何か熱いものを感じ取り、明日への活力になることを念じ、勝利に向け、日々戦っています。プロレスにのめり込んで日々が楽しくなった僕のような人がいてくれることを信じて。

撮影/弦巻 勝


棚橋弘至 たなはし・ひろし

1976年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。立命館大学法学部卒。大学在学中、新日本プロレスの入門テストに3度目の受験で合格。99年にリングデビューを果たす。チャラ男、ナルシストキャラを前面に押し出す異色のレスラーとして注目を集める。06年にIWGPヘビー級王座に輝く。12年には同王座11連続防衛記録を樹立。名実ともに新日本プレロスのエースに君臨。近著に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)

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