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「福袋」と新日本プロレス1・4東京ドーム大会

2015-01-10

プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

お正月の風物詩のひとつ「福袋」。

この福袋、いつの頃からかまったく意味合いが変わってきた。以前は中身に何が入っているかはわからないのが当然。思わぬ興奮もあれば期待外れもある。「当たりハズレ」が福袋の売りだった。

しかし最近は「中身を見せて売る」方向がトレンドだという。そんなの福袋の醍醐味がまったくないじゃないか、と呆れる人もいるだろう。そういう人は「大いなる無駄」を楽しめる人だ。

しかし一方で思う。今の時代に白か黒かわからないグレーはなかなか受け入れられない。非合理は嫌われる。

エンタメだってそうだ。数年前、ある映画雑誌が若者に「なぜ映画館に行かないのか」と問うたら「面白いか面白くないものにお金を出したくない」という答えが返ってきたという。昭和からプロレスを観ている者にとっては信じられない回答だ。何度もスカされ裏切られながらも、ここぞというときに名勝負や感動をプロレスは体験させてくれたからだ。あの頃のファンは妙な耐性があった。

しかし今はそんな悠長なことは言っていられない。客に甘えていられない。貴重なお金と時間を「出している」という高い消費者意識を持ち出されるのなら、一枚のチケットで確実に楽しませなければ生き残れない。「次」はないのだ。

そう考えると、「福袋」と「新日本プロレス」のありようが非常に似ていることに気づいた。

今の新日本プロレスは中身が確実だ。スター選手が揃い、レベルの高い試合、安定の興行。プロレス初心者も安心して連れていける。

以前のドーム大会はどんな結果になるかわからないカードを投入した「昔の福袋」だった。刺激とリスクが満ちていた。客は当たりハズレを前提で行くしかない(だからたまらないというファンも多かった)。

しかし今の新日本はドーム大会も自前のカードで勝負する。そこにはハッタリや仕掛けはない。内容で納得させる自信があるからだろう。これって、中身を最初から公開している「今の福袋」とまったく同じではないか。

「中身が保証されている安心安定のプロレスなんて魅力ないよ」という客もいるだろう。しかし新日が見据えているのはそういうファンや他団体ではなく他のエンタメなのだと思う。テーマパークやアーティストのライブが「競合先」と考えているフシがある。

そう見立てると、私が今年の1・4東京ドーム大会で注目したのは試合結果ではなく興行時間だった。いくら大きな大会とはいえ、いくら内容が保証されているからとはいえ、長時間ダラダラやっていては一流興行ではない。たしか去年は5時間ぐらいかかった。

間違いなく今年の課題は興行時間だ。そう思って見たら、昨年との違いが如実にみえて面白かった。まず休憩時間をカットしていた。そして試合と試合のあいだの転換も早かった。

メインイベントが終わって時計を見るとトータル約3時間半!これなら初めて足を運ぶお客さんも戸惑わないだろう。他のエンタメ興行とそんなに変わらない。恐らくだが、時間短縮に頭をひねってこの日を迎えたであろうスタッフ達は快哉を叫んだに違いない。

新日本プロレスはまたしても今の客が安心して買える「福袋」となった。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

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