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「永遠の0」の戦場を生き抜いた男が語ったゼロ戦「ラバウル航空戦の真実」vol.1

[週刊大衆09月02日号]

「あれは、ちょうど私が中学2年生の頃でした。その当時、私の郷里・熊本では飛行機なんていうものは見ることができませんでした。空を飛ぶ乗り物は、山みたいに大きなものかと思っていましたよ。
ある日、新聞で陸軍の練兵場に飛行機がやって来るという記事を見たので、学校をさぼって見に行ったんです。そうしたら、考えていたよりずいぶん小さく、その飛行機から、これまた小さい人が降りてきたんです。しかも、よく見たら女性だったんですよ。それで“へぇー、女でも飛行機に乗れるのか。そんなら俺も乗れるんじゃないか!”と思ったのが、飛行機乗りになるきっかけとなりました」

ラバウル航空戦や本土防空戦で大活躍した戦闘機パイロット、本田稔・元海軍少尉はこう目を細めた。

本田稔氏(大正12年生れ)は、帝国海軍の戦闘機パイロットとして6年間操縦桿を握り続け、戦後は、航空自衛隊に入隊。パイロット教育と新鋭機の試験飛行を担当し、退官後も三菱重工業で22年間、テストパイロットとして飛び続けた。総飛行時間は実に9800時間という記録を持つ名パイロットである。
「なんて言えばよいんですかね……私は“飛行機バカ”なんです。飛ぶことが私のすべて。とにかく、空を飛ぶことが三度の飯よりも好きだったんですよ」

昭和14年9月28日、本田氏は霞ヶ浦海軍航空隊に入隊し、厳しい訓練のあと、昭和16年9月に大分航空隊へ転属。ここで本田氏は、複葉機の「90式艦上戦闘機」に4~5時間乗った後、ただちに「95式艦上戦闘機」で、実践的な空戦と射撃訓練に励んだ。そして12月8日の開戦をもって、大分航空隊での訓練期間が1カ月繰り上げられ、台南の「第22航空戦隊」に配属されることになった。

続いて本田氏は、ボルネオのミリ基地から南部のクチン基地に移動。現在のベトナム方面の哨戒任務を命じられた。そんなある日、本田氏の零戦小隊が哨戒飛行に出かけて帰投しようとしたとき、2機の英空軍の戦闘機「バッファロー(開発国は米国)」を発見した。
「バッファローが哨戒に来ておったのを見つけたんです。それで、わが小隊の1番機と2番機が、そのうちの1機を撃墜したんです。それで、残るもう1機を私がやることになって、敵機の後ろ上方から攻撃していったんですが、当時はまだ機銃のクセを掴めておらず、撃っても撃っても当たらないんですよ。とうとう弾がなくなってしまって、仕方なく、そのまま追いかけておったんです。そしたら、その敵機が操縦を誤って、ジャングルに突っ込んでいったんです」

これが、本田氏の初戦果である。昭和17年3月、本田氏らはビルマの首都・ラングーンの攻略戦に備えて、タイの首都・バンコクに進出し、英軍航空基地の攻撃を行った。そして、インドネシアでインド洋方面の作戦に従事したあと、ラバウルを拠点に米軍との死闘を繰り広げることになる。世界空戦史に燦然と輝く「ラバウル航空戦」である。

ラバウルに着任した翌夜、攻撃隊指揮官の中島少佐から訓示があった。
〈目的は、ガ島周辺に群がる敵艦船と飛行場の攻撃に向かう中攻隊の護衛である。片道4時間、距離1千キロ、空戦時間5~10分、帰路再び同じコースを帰り都合8時間15分、距離2千キロの飛行だ。飛んで行って帰ってくるだけでも相当な苦労である。おまけにこれまでに遭遇したことのない強力な敵戦闘機隊が待ち構えている。決して油断はならん。明日の出撃はすでに戦闘に参加した者が大部分であるから貴様たちは編隊を崩さぬようにガッチリついて来い〉(『本田稔空戦記』光人社NF)

ガ島とはガダルカナル島のこと。中攻隊とは、九六式陸上攻撃機や一式陸上攻撃機のような中型攻撃機からなる攻撃隊であり、戦闘機と違って空中戦には不向きだ。翌朝4時、一式陸上攻撃機26機、これを護衛する零式艦上戦闘機21機がガダルカナル目指してラバウル基地を離陸した。

「ラバウルからガダルカナルは、とにかく遠かったです。片道4時間かかりますから、敵機との空戦は、せいぜい5分ぐらいにしておかないと、帰りの燃料がなくなるんです。
敵は、その途中の島々にウオッチャー(見張り)を配置しており、我々の動きはすべて米軍に通報されていたんです。さらに、敵は電探を持っていたので、上空で我々を手ぐすね引いて待ち構えていましたよ。
ガダルカナルで空戦をやってラバウルに帰るときは、ほとんどが単機ですからね。道中、目印となる島々や湾の形などを覚えておかねばならなかったですね」

8月31日公開のvol.2に続く・・・

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