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黒子に徹し人生を学んだ『人間力』入来祐作(福岡ソフトバンクホークス3軍投手コーチ)

[週刊大衆02月16日号]

黒子に徹し人生を学んだ『人間力』入来祐作(福岡ソフトバンクホークス3軍投手コーチ)

「打撃投手時代に、誰の役にもたてないことのしんどさを知りました。だから、なんでもいいから人の役に立っていたいんです」

今季から、福岡ソフトバンクホークスの3軍投手コーチを任されることになったんです。入団会見の時には、感極まって泣いてしまったんですが、それで親父に怒られました(笑)。「お前、これから若い奴らを教えなあかんのに何、泣いとるんだ。ナメられるぞっ」って。

その九州の頑固親父は、いま80歳ですけど、ハーレーダビッドソンに乗ってブイブイいわせていますよ。僕がプロ野球選手になった時にプレゼントしてからずっと乗っているんです。僕が小さい頃からいつも「いつかハーレーに乗りたい」って言っていて、僕が巨人への入団が決まると、親父がハーレーのカタログ持ってきましたもん(笑)。でも、お陰で親孝行できました。

巨人入団から、大リーグ時代を含め12年間、プロとしてやらせていただきました。08年に戦力外通告を受けたときは、頭が真っ白になりましたね。僕が所属していたマネージメント会社も困っていました。

もう、ユニフォームは着ることはできないだろうなと僕自身、思っていましたし、テレビの野球解説者なんてもってのほか。解説者は、僕なんかよりもっと実績を残した人がやる仕事ですよ。僕なんかが、どのツラを下げてやるのって感じでしたね。
でも、僕から野球を取ったら何も残らないんですよ。どんな形でもいいから野球に携わっていたいと思って、当時所属していた横浜(現・横浜DeNA)のフロントの方に頼み込んだんです。「何か仕事ありませんか」と、それこそ、毎日でも電話したかったんですが、むこうの迷惑も考えて、週1回連絡し続けましたね。

現役時代、いい気になっていたツケが回って来たんだと思いました。野球選手を引退した瞬間に、自分の周りには誰もいなかったんです。自分で反省ばかりの野球人生だったなと思ったんです。このままでは終われないと思っていたところに、球団フロントの人から電話がかかってきたんです。「入来くん。打撃投手なら枠が空いたけど、やってみますか」と。ようやく訪れた福音。「はい!ありがとうございます」と二つ返事で引き受けました。

もちろん念願が叶ったわけですから、嬉しかったんですが、正直、打撃投手といわれても何をすればいいのか、わからなくて不安でした。
キャンプ初日。キャンプでは投げる時間が長いんです。35分とか40分位投げるんです。キツかったです。しかも、もうボールを投げることで評価をされない。現役時代なら、パシーン、パシーンと投げることで、"入来、今年も使えるな"と、首脳陣に思ってもらう場じゃないですか。だけど、僕らがやる打撃投手は、そういった存在意義はないんです。その時間は、バッターが監督やコーチに認めてもらうための時間です。僕は黒子。それを、受け入れたつもりだったんですが、受け入れてなかったんですね。

春季キャンプ後、イップスになりました。ボールが視界から消える大暴投になるかと思えば、ベースの遥か手前でワンバウンドしちゃう。先輩から「俺の視界から消えろ」と叱責されました。僕は、本気で消えたかったですね。何がきついって誰の役にも立ててないんですよ。

その後、打撃投手失格の烙印を押されて、用具係になったんですが、とにかく、なんでもいいから人のために役に立とうと毎日を過ごしてきました。
あの会見で、そんな裏方の6年間の口に出せない悔しい思いとか、やるせない思いとか、そういうことが思い浮かんできたんです。工藤公康さん(ソフトバンク新監督)から、華やかな場を設けてもらった嬉しさもあって、涙が出たんです。

工藤さんに、3軍の投手コーチに抜擢して頂いた恩に報いなければなりません。野球選手でいられる時間なんて、ほんのわずかなんです。その限られた時間ということを噛みしめて一生懸命プレーすることを選手たちには伝えていきたいです。

撮影/弦巻 勝


入来祐作 いりき・ゆうさく

1972年8月13日、宮崎県生まれ。PL学園、亜細亜大学、本田技研工業を経て、1996年ドラフト1位で読売ジャンアンツに入団。その後日ハム、メジャーのメッツ、横浜(現横浜DeNA)ベイスターズでプレーし現役引退。12年間の通算成績は35勝35敗3セーブ、防御率3・77。翌年からバッティング投手、用具係を6年間こなす。今年、現場を離れて長い極めて稀なケースとして、ピッチングコーチとして現場復帰を果たす。裏方で培った人間力を活かし、優秀な指導者になると期待されている。

黒子に徹し人生を学んだ『人間力』入来祐作(福岡ソフトバンクホークス3軍投手コーチ)

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