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常に自己ベストと不機嫌な顔を見せ続けた天龍

2015-02-14

プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

天龍源一郎(65)が現役引退を表明した。

「最近のプロレスの会見では異例のテレビカメラ8台、約80人の報道陣が集まった。」(日刊スポーツ)という。

プロレスに興味のない人は「え、65歳まで現役だったの?」と思う人もいるだろう。その反応は自然だ。そしてそれはプロレスの魅力や凄味の答えが詰まっている部分でもある。

スキーの葛西紀明やサッカーの三浦和良、テニスのクルム伊達公子。彼らは年齢を重ねて体力が落ちる代わりに新しい技術やインサイドワークを増すことで現役なのだと思う。天龍にもスポーツ選手として同じような長持ちの理由はあったはず。

しかし何よりプロレスが特殊なのは、闘っている相手がリング上だけではないことだ。観客であり、時には世間である。

こうなると、若ければ若いほど良いという「スポーツだけの論理」はむしろいらなくなる。

実際にプロレス会場にいる観客は、年齢に関係なく常に「自己ベスト」を更新するレスラーを見るのが好きだ。

たとえば鈴木みのるは30代中盤になってからプロレス界の中央に戻ってきた。そこから新しい風景を次々に観客に見せてくれた。

自分が試合をして観客が「うわっ」となり、そのことに対する対価を手にできたという認識ができたとき「オレ、プロレスが好きなんだな」と鈴木は思ったという。自信を持ったという。

やってる本人がそうなら観客はますます虜になる。現在46歳だが「鈴木みのる史上最高」を常に更新している。コンディションも含めて。むしろこの年齢になったからこそ、わかることがたくさんあるのかもしれない。

ましてや、天龍源一郎である。天龍こそは30年以上「自己ベスト」「新しい風景」を見せてくれてきたレスラーだ。天龍革命、馬場&猪木からフォール勝ち、ランディ・サベージとの異次元勝負、新団体参加・・・あげたらキリがない。

個人的には「不機嫌そうな顔」を客前で隠そうともしないのが「新しい風景」で斬新だった。怒りではなく、うっ憤がたまっていることを観客も共有したのだ。そんなレスラー、私は初めてだった。あのチョップやグーパンチ、サッカーボールキックはすべて観客に放たれたものだ。

先月後楽園ホールで観た時も、入場時は歩くのもしんどそうに見えたのだが、いざゴングが鳴れば激しい攻防は健在だった。凄いなぁと唸ってしまった。

11月の引退試合が天龍の「自己ベスト」である可能性は十分ある。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





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ブログ:http://orenobaka.com/
ツイッター:@pkashima

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