日刊大衆TOP 芸能

「新幹線焼死男」と高倉健を結ぶ、意外な点と線とは?

[週刊大衆07月27日号]

「新幹線焼死男」と高倉健を結ぶ、意外な点と線とは?

いまだに衝撃が残る「新幹線放火焼死事件」――。
東京・杉並区に住む林崎春生容疑者(71)が6月30日、東京発『のぞみ』225号の車内で放火して焼死、整体師の桑原佳子さん(52=横浜市青葉区在住)が巻き添えになって死亡。28人が重軽傷を負った。

「最短3分間隔で運行している新幹線で、一人ひとり、手荷物検査を実施することは難しく、テロへの脆弱性が露呈、関係方面に衝撃を与えました。さらには新幹線そのものの信頼も揺らぎ、政府とJRが一体で進める新幹線輸出にも影を落とす結果となりました」(全国紙社会部記者)

一方、この事件の背景として、高齢者の貧困問題も指摘されている。
林崎容疑者は清掃関係の仕事を辞めてから、月額12万円程度の年金暮らし。2Kのアパートの家賃や税金、公共料金などを除くと、手元に残るのは4万円ほどだったようだ。林崎容疑者は「これだけの年金ではとてもやっていけない」と周囲にこぼし、姉に「なかなかパートが見つからない」と不満をぶつけていたという。
「しかも、過去には複数の消費者金融などから借金し、知り合いの杉並区議にローン返済の相談を持ちかけていました」(同記者)

また「年金事務所で首をくくる」と周囲に洩らしており、生活苦から焼身自殺を遂げた経緯が浮かび上がっているが、なぜ男が新幹線を"その場"に選んだのかは不明とされている。

だが、本誌が取材を進めるうち、意外な側面が見えてきた。男と40年来の知り合いだという杉並区議の男性(前述した区議とは別)に取材。昨年他界した名優・高倉健や新幹線との意外な接点が浮上したのだ。

1943年(昭和18年)、岩手県で12人兄弟の家に生まれ、中学卒業後、集団就職で林崎容疑者が上野駅に降り立ったのは、58年(昭和33年)頃。集団就職組は当時、"金の卵"といわれ、高度経済成長を支えた世代だ。件の区議が当時を、こう振り返る。
「僕はいくつか年下でしたが、知り合った当時の彼は、西荻窪駅南口の通称・小便横町という飲み屋街で流しをしていました。3曲1000円でね。北島三郎や三橋美智也……一番よかったのが、集団就職の哀歌とも言える『あゝ上野駅』。まだカラオケがなかった時代だから、地元じゃ、いっぱしの流しで通っていましたよ。だから、僕の後援会の会合に呼んで歌ってもらったりしたこともありました。けっこう羽振りのいい時代もあったはずです。スポンサーからもらったギターは、50万円もする高価なものでした」

しかし、カラオケが普及すると、流しを廃業。トラック運転手や造園業の手伝い、建築現場などで働くようになったという。
「2人とも高倉健さんの大ファンでね。任俠映画では、最後に健さんが殴り込みをかけるシーンがあるでしょう。だから、まだ彼が流しだった時代、2人で飲んでいるとき、よく健さんの話題になりました。で、"死ぬときくらいは華々しくいこうぜ"って。あの時代は、みんなそうだと思うけど、高度経済成長の一方、大組織の歯車の一つとして地味な生涯を送ることに不満だらけでしたからね。酔っ払うと、みんな健さんになりきっていました。あれが僕らの普段の憂さ晴らし。でも、まさか、それを実行してしまうとは……」(同区議)

その高倉健の隠れたヒット作に『新幹線大爆破』(75年・東映)がある。時限爆弾を東京発『ひかり』109号に仕掛けたと、健さん扮する犯人らが国鉄(現JR)に身代金を要求。最後には新幹線爆破が阻止され、犯人は射殺されるというストーリーだ。

林崎容疑者は、その映画をヒントに、自殺場所として新幹線を選んだ可能性があるという。
「林崎容疑者の姉は電話で、"国会議事堂前で自殺するなんてできねえし……"と言う彼の愚痴を聞いています。また彼は事件当日、"最後のお金を持って新幹線に乗っています"と区役所に電話していたそうです」(前出の社会部記者)

林崎容疑者は、華々しく死ねる場所として新幹線を選んだのか。映画評論家の秋本鉄次氏が、こう語る。
「あの世代にとって、健さんの"最後は華々しく"が刺激になっていたのは事実でしょう。しかし、健さんのファンなら、その優しく男らしい生きざまを真似してほしかった。容疑者の行動は、華々しいどころか、ただのヤケクソとしか思えません。政府に抗議するとか、他に方法があった。事件になってしまったら、同情の余地はないでしょう」

日本の経済成長を支えた世代ゆえの陥穽(かんせい)か、容疑者の"本性"ゆえか。事件は社会問題としても、多くの闇を浮かび上がらせた……。

「新幹線焼死男」と高倉健を結ぶ、意外な点と線とは?

この記事が気に入ったら
をしよう

いいね!

@taishujpさんをフォロー

大衆のオススメ


オススメタグ


人気記事ベスト10


日刊大衆公式チャンネル


Copyright(C) 日刊大衆 Futabasha Publishers Ltd. All rights Reserved.