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戦艦「大和」最後の生き残り士官が激白!レイテ沖海戦「謎の反転」70年目の真相 vol.1

[週刊大衆8月19・26日合併号]

「私が乗っていた戦艦『大和』が、当初の計画だったレイテ湾に向かわず、北へ進路を取ったので、私は指揮所から艦橋に行って、“どうして北へ行くんだ?”と聞いたんです。すると航海士は“わかりません!”と言うんです。
ふと見ると、艦橋の後ろのほうに参謀が三人ほど集まっていて何やら話していたので、そのうちの作戦参謀に“レイテ湾は南じゃないんですか?どうして北へ行くんですか!”と言ったら、その参謀がえらい剣幕で怒り出しましてね。手元の電報を見ながら“この電報にある敵を攻撃しに行くんだ!”と。けれど、その電報には発信者がいなかったんですよ……」
今年99歳を迎えた戦艦「大和」の副砲長・深井俊之助・元海軍少佐は、栗田艦隊の旗艦「大和」の艦橋内部の様子をこう語る。

栗田艦隊が“決戦場”レイテ湾へは向かわず、突如、進路を北へ向けて転進し、戦場を離脱したのは、大東亜戦争最大のミステリーとされている。
いわゆる“謎の反転”である--。

昭和19年10月17日、その数十万の米上陸部隊(指揮官=W・クルーガー中将)を乗せた400隻の輸送船と、戦闘艦艇、補助艦艇合わせて300隻余を誇るT・キンケード海軍中将の77機動部隊が、暴風雨吹き荒れるフィリピンのレイテ湾に姿を現した。
もはや一歩も譲れない日本軍と、フィリピンを奪還して対日戦に王手をかけたい米軍の間で、いままさに壮絶な戦いの火蓋が切られようとしていた。

当時の日本にとって、フィリピンは南方の資源供給地との中間に位置する要衝であった。フィリピンがアメリカの手に陥ちれば、日本の継戦能力は潰えてしまう。したがって、日本軍はどんなことがあってもフィリピンを守らねばならなかった。フィリピンを巡る戦いは、まさしく大東亜戦争の天王山だったのだ。

歴史にその名を残す“神風特別攻撃隊”が誕生したのも、フィリピン決戦においてだった。
「将兵はここに死傷逸せざるの覚悟を新たにし、獅子奮戦、もって驕敵(きょうてき)を殲滅(せんめつ)して皇恩に応ずべし」
連合艦隊司令長官・豊田副武(そえむ)大将は、レイテ湾に向けて驀進する艦隊の壮途をこう激励した。

昭和19年10月20日、「レイテ島に米軍上陸」の報を受け、大本営は「捷(しょう)一号作戦」を発令。陸軍のレイテ島への戦力集中に呼応して、海軍も敵上陸部隊を撃滅せんと、レイテ湾に急行したのである。

捷一号作戦--。17年6月のミッドウェーでの惨敗を機に、空母や航空機の大半を失った日本海軍が、残存する空母「瑞鶴」「瑞鳳」「千代田」「千歳」を中心とする最後の空母機動部隊(指揮官=小沢治三郎(じさぶろう)中将)17隻で“おとり艦隊”を結成。これをルソン島北方海域に進出させ、ハルゼー提督の米第3艦隊を吊り上げている隙に、主力艦隊がレイテ湾に突入し、敵輸送船団を殲滅するという一大作戦である。主力艦隊の指揮を執ったのは栗田健男(たけお)中将であったため、「栗田艦隊」と呼ばれていた。

10月22日、栗田中将率いる戦艦「大和」「武蔵」「長門」を含む32隻の第一遊撃隊は、ブルネイを出港。シブヤン海からサンベルナルジノ海峡を抜けてサマール島東岸沿いに一路、レイテ湾へ。さらに、戦艦「山城」「扶桑」以下、7隻の西村艦隊(指揮官=西村祥治(しょうじ)中将)も、ミンダナオ島北方のスリガオ海峡を抜けてレイテ湾を目指した。

西村艦隊には、スール海から重巡「那智」「足柄」を中心とする10隻の志摩艦隊(指揮官=志摩清英中将)が合流する計画だった。
総勢66隻を数える主力艦艇が動員されたことからも、日本海軍が、このレイテ決戦にすべてを賭けていたことが、おわかりいただけよう。

最後の日米艦隊決戦ともいえる比島沖海戦は、10月23日の米潜水艦による重巡「愛宕」「摩耶」「高雄」撃沈を皮切りに、26日まで続いた壮絶な戦いだった。
まず10月24日に、「大和」と同級の超ド級戦艦「武蔵」が、米艦載機の雷爆撃により沈没した。深井氏は、こう述懐する。
「あのとき、雲霞(うんか)のごとく押し寄せてきた敵機は、『大和』と『武蔵』を狙ってきました。しかし『大和』の艦長・森下信衛(のぶえ)大佐は、水雷戦隊出身で、現場主義の艦長でしたから操艦がたいへん上手かった。それに『大和』は、これまでずっと訓練してきましたからね。
ところが『武蔵』は、新しい艦だったため練度が大和より劣っていたうえに、猪口艦長が砲術畑の人でした。そんなところにも、違いがあったと思います」

8月16日公開のvol.2に続く・・・

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