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明治大学教授・斎藤孝「世阿弥やニーチェと話してみたいと思いませんか?」~読書で鍛えた人間力

[週刊大衆09月28日・10月05日号]

明治大学教授・斎藤孝「世阿弥やニーチェと話してみたいと思いませんか?」~読書で鍛えた人間力

「世阿弥やニーチェと話してみたいと思いませんか?」

最近は、インターネットの発達で、メールやSNSなどを通じて、同じレベルの人同士で関わり合う時間が非常に長くなっています。

確かに同じ価値観を持った人同士での会話は楽しいものです。でも、私は、そのやり取りだけで時間が過ぎてしまうのはとてももったいないと思うんですよ。
もっと自分のまったく知らない世界を旅するとか、文豪のような"巨大な人"の話を聞くとか、自分の知らない価値観にふれるっていう時間がとても大切なのではないかなと。

たとえば、サッカーでいえば、メッシやクリスティアーノ・ロナウドなど世界の一流選手と一緒にプレーしてみたいと思いますよね? 人間として生まれたからには、世阿弥や、ニーチェと話してみたいと思いませんか?

それを簡単に実現できるのが、僕は読書だと思うんです。
"ゲーテの話を10時間、聞けます"っていったら、何十万と払う人はいっぱいいると思うんです。ただ、書店に行けば、『ゲーテとの対話』という本が1000円くらいで売っている。ライブではありませんが、想像力を働かせれば、自分に語りかけているようにも読めますよ。

そういった本を何度も読み返すうちに、その人の思想が自分の中に入り込んでくる。特に、著者になりきったつもりで、本に書かれていた内容を人にしゃべっていると、著者が他人に思えなくなってくるんです。
色んな本を読んでいくと、どんどん自分自身の内面に、いろんな偉人たちが住み込むようになっていくんですよ。だから、人間力っていうのは、僕はどれだけ多くの他人を自分の中に住まわすことができるかということだと思います。

僕自身が、読書の魅力に気がついたのは、中学生のときでした。勝海舟が人生の知恵を語っている『氷川清話』という本があるんですが、そこでは、歴史上の人物である勝海舟の優れた人物観察眼を目の当たりにできるし、この連載のテーマである人間力というのも、どういう人が、人間力があるのかが、これを読むとわかるんです。普通の生活を送っていたら、勝海舟の話なんて絶対に聞けませんよね。その本を1年間、常にカバンの中に入れて持ち歩いて、暇を見つけては読んでいました。

ただ、本を読むとなると、何かと億劫になってしまう人も多いでしょう。お仕事にされている方は時間的制約が大きいだろうし、本を読むのが苦手という人もいるかと思います。
そんな方に向けて書いたのが、『本をサクサク読む技術』(中公新書ラクレ刊)です。

まず、知ってもらいたいのは、本は最後まで読む必要はないということ。せっかく買ったのだから、最初から最後まで読み切らなきゃいけないという一種の脅迫観念のようなものがあると思うんですが、飛ばし読みをしてもいいんだと思うことが大事。自分が面白いと感じる部分は何度でも読んで、その他の部分は軽く読み流す。そういうギアチェンジができるようになれば、本はサクサク読めるようになります。

僕は、定職についたのは、30歳のときでした。研究者の道に進もうと決めましたが、研究の世界ではなかなかお金がもらえない。世の中に対して、なぜ自分の考えが理解してもらえないのかと、攻撃的な気持ちを持っていた時期がありました。
でも、そんな時でも本を読み続けていました。40代になって、『声に出して読みたい日本語』が、ありがたいことに多くの人に読んでもらうことができてから、執筆の依頼がたくさん来るようになりました。

その1作だけで終わらなかったのは、20代、30代の時期も、読書をしていろいろな物をためこんでいたからだと思います。だから、結果としてみれば、その世間に認められない期間があったのは、いいことだったのかもしれません。

みなさんも本を読んで、精神の糧にしてみませんか。

撮影/弦巻 勝


斎藤孝 さいとう・たかし

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程等を経て、現在は明治大学文学部教授。01年に出版された『声に出して読みたい日本語』(草思社刊)が、シリーズ260万部を超える大ベストセラーとなり、一躍脚光を浴びる。その他にも数々の著作を世に送り出し、著書の累計発行部数は1000万部を超える。執筆活動のほかにも、情報番組のMCを務めるなど、マルチに活躍している。

明治大学教授・斎藤孝「世阿弥やニーチェと話してみたいと思いませんか?」~読書で鍛えた人間力

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