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“深海の魔王”30の秘密 「戦慄シミュレーション ダイオウイカvs自衛隊 もし戦わば…」vol.1

[週刊大衆8月12日号]

その昔、ノルウェーやアイスランドの近海では、海難事故が多発していた。
島と見紛うほど巨大な生物が何本もの足で船を掴み、海に沈めていったという。この怪物はクラーケンと呼ばれ、イカに似ているともタコに似ているとも伝えられたが、真相はわからず、世界中の船乗りを恐怖に陥れた。
その後、10メートルを超える巨大なイカの死体が世界各地で打ち上げられ、人々に衝撃と戦慄を与えた。このダイオウイカこそがクラーケンの正体とされたが、生きる魔王を目にした者はいなかったのだ。

そして昨年の夏--人類は小笠原諸島近くの深海において、ついに、その泳ぐ姿をカメラで捉えることに成功した。NHKや国立科学博物館の窪寺恒己教授を中心に、世界中の研究者が協力して10年の歳月をかけた結果だった。
その映像が今年1月、NHKスペシャルで放送されるや、ドキュメント番組では異例の平均視聴率16・8%を記録。日本のみならず、海外でも大反響だったという。

現在、国立科学博物館では、特別展『深海-挑戦の歩みと驚異の生きものたち-』が開催され、連日大盛況となっている。
この、かつて多くの船を海中に引きずり込み、人命を奪ったと思われる“深海の魔王”から航海の安全を確保するにはどうしたらいいのか?ここは自衛隊の力を借りるしかないだろう--深海の怪物vs人類という壮大な戦いを完全シミュレートしてみた。

まずは敵を知るべし!
農水産ジャーナリストの梅崎義人氏が、ダイオウイカの最大の特徴である大きさを解説する。
「50年代に日本の捕鯨船が捕獲したマッコウクジラを解剖した際、胃の中から体長10メートル、重さ180キロのダイオウイカが発見されたそうです。
私たちが普段目にするイカの中で最も大きいアカイカが体長30~40センチ、重さ5キロ程度ですから、その大きさがわかります」
ちなみに、これまで確認された最大のダイオウイカは、19世紀に打ち上げられたもので、体長18メートル。

その体長の半分以上を占めるのが、腕(脚)で、全部で10本ある。そのうち長く伸びる2本は「触腕」と呼ばれる。
その腕には無数の吸盤が並び、この吸盤一つ一つにノコギリ状の小歯が付いている。獲物を捕らえた際にこれを相手の体に食い込ませ、身動きできないようにするという。
この点、自衛隊の潜水艦や艦船であれば、鋼鉄で覆われているだけに問題ないだろう。

「生息域は水深600メートルから1000メートルを基本とし、餌を探す日中は600~800メートルで活動します。夜になると、水深400メートルまで上昇すると見られます」(生物学ジャーナリスト)
生息海域は、太平洋、大西洋を中心とした世界の温帯領域でかなり広い。ただし、北極、南極と赤道直下付近では生息していない。
つまり、自衛隊が日本の周辺海域の深海でダイオウイカと戦うことは、十分考えられるのだ。

その際、注意したいのが、深海の暗さ。水深200~1000メートルは「トワイライトゾーン」と呼ばれ、太陽光がかすかに到達するが、人間の目では光を一切感じることができない。
「ダイオウイカは、生物界最大級の直径25~30センチの眼球を持っており、解像度は人間に匹敵します。わずかな光にも敏感に反応できるため、深海の暗さを苦にしません」(前同)

そんなダイオウイカの目にも弱点が!
「白い光には敏感なんですが、赤い光は感じることができないんです」(同)
前述のNHKの撮影でも、赤い光を照射しながら、宇宙用カメラを改良した超高感度カメラで撮影する予定だった。
しかし、囮として用意したソデイカを食べることに夢中だったダイオウイカの姿を見た窪寺教授は、観察しやすいように白い光を当てるよう指示した。
光を感じた瞬間に逃げる可能性が高いため、一種の賭けだったが、ダイオウイカは逃げるどころか、悠々と23分間にわたって、その姿を見せ続けた。
そして白色ライトに煌々と照らし出された結果、それまで謎だったダイオウイカの“色”が明らかになった。背は金色、腹は銀色に輝き、美しい光沢を放っていたのだ。

このときの様子を、窪寺教授は特集雑誌で次のように振り返っている。
〈最初はそれほど輝いてはいなかったのですが、3、4分経ったときから黄金色に輝くあの色が出てきた〉
実は、ダイオウイカのように、背が濃い色、腹が銀色という配色は、浅い海に生息する生物の典型的パターン。
つまり、ダイオウイカは、かつて浅い海にいたのかもしれない。

「これまでは、白色化したダイオウイカの死骸しか発見されておらず、生存時の色は不明でした。“色の発見”は、今回のプロジェクトの最大の功績の一つです」(前出・生物学ジャーナリスト)

8月8日公開のvol.2に続く・・・

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