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歌手・橋幸夫「歌ってやっぱり人生そのもの」~歌の力を信じる人間力

[週刊大衆11月09日号]

歌手・橋幸夫「歌ってやっぱり人生そのもの」~歌の力を信じる人間力

「歌ってやっぱり、人生そのものの中にみんな入っていると思うんです」

ありがたいことに、今年で芸能生活55周年を迎えることができました。
よく、長い間、活躍する秘訣は何かって聞かれるんですけど、秘訣なんかないんですよ。通り一遍な答え方になってしまうんですが、つくづく、ファンやスタッフがあっての自分だなと思いますね。

山の中に住んでるわけじゃないんだから、人があって自分。自分が歌いたいもの、好きなものが、聴く側と違うってことは随分経験していますからね。世間がいい曲と思ってくれて、初めていい曲になるんですよ。
だいたい、僕は才能なんていうのは、普通の人と変わりないんです。
もちろん努力は、プロの世界にいる人間として、当然のことですが、9割が運ですよね。人間なんて。

僕が17歳のときに『潮来笠』でデビューしたんですが、それが1960年。当時は、ラジオ中心だったのが、ちょうどテレビになっていく時代でした。今でいえば、ビジュアル重視になっていった。『潮来笠』のヒットは、そういった時代背景が大きかったと思います。

今と違って、娯楽が少ない時代ですから、1曲ヒットしたらすごかった。『紅白』の視聴率が80%を超える時代だったので、どこの商店街に行っても、電信柱についていたスピーカーから自分の歌が流れていた。
プライバシーなんて言葉自体ありませんでしたから、雑誌を見たら書いてあるんですよ。自分の住所が。ファンが毎日、家に来ていましたね。
郵便屋さんが、がま口みたいなショルダーバッグに郵便物を入れて、持って来るんですが、全部、僕宛てのファンレターなんですよ。

でも、当時はファンのマナーもよくて、一線を越えてくることはなかったから、両親もファンを家にあげて、ご飯をご馳走してたりしていた。おおらかな時代だったんですね。

ただ、デビューから10年もすると、被写体でいることがとても辛くなったんです。何を出しても、ヒットしなくなってきたし、スランプだったんですかね。歌手って死ぬまで歌手なんですよ。
野球選手なら、引退後はコーチになって、監督になってとレールがあるのに、僕らにはそういうものがない。それがすごい不満だった。だから自分で、その道を作ってみたかった。

それで、レコード会社を作ったんです。毎朝9時に会社に行って、名刺を配ってと、タレントの活動とは違うものでしたから、楽しかったですよ。ただ、8年は続いたんですが、いろんな事情で、頓挫してしまった。
その時に何ができるかっていったら、また歌い手に戻るしかなかったんですよね。でも、その体験をして、歌に対する意識が随分変わっていたんです。ちょっと離れたことで、歌うっていうことが、どれほど人に影響を与えるかって学べたんです。
 
歌ってやっぱり、人生そのものの中にみんな入っていると思うんですよ。当時は、集団就職で故郷を離れざるをえなかった人たちが、歌に励まされたり、歌を聞いて、転職を決意した人がいたり、自殺を思いとどまった人もいると思うんです。

歌っている時って、見えなかったんですよ。そういう人たちがいるってことが。それが一度、離れてみてわかったことですね。それからは歌うことが僕にとって、一番のテーマ。
55周年を記念して、出した『長州にて候』は、歌を通して、色々な問題が出てきた日本という国をもう一回見直すヒントになってくれればいいなという気持ちで歌った曲です。今は国を思うなんて言葉自体が死語のようになってしまっていますが、幕末には、命を懸けてでも日本を変えようとした人たちが大勢いた。その先頭に立っていた長州藩、そのなかでも高杉晋作という異色な男を歌にしたんです。

歌の影響力は身に染みてわかっています。政治でしか世の中は動かないかもしれませんが、僕たちが歌うことで、国民一人一人がそれぞれの立場で国のことを考えるようになってくれたらなと思います。

撮影/弦巻 勝


橋幸夫 はし・ゆきお

1943年5月3日、東京都生まれ。本人は歌手になる気持ちはなかったが、母親、兄の薦めで歌手の道へ。1960年のデビュー曲『潮来笠』が大ヒットし、その年のレコード大賞新人賞の第一号受賞者に。その年の『NHK紅白歌合戦』にも初出場を果たし、その後17年連続出場、計19回出場。62年の『いつでも夢を』、66年の『霧氷』で2度レコード大賞を受賞する。今年で、芸能生活55周年を迎える日本を代表する歌い手として、なお現役で活躍中。

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