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モニュメンツ・メン財団代表・ロバート・M・エドゼル「芸術なくして、人生はなし」~芸術を愛する人間力

[週刊大衆11月16日号]

モニュメンツ・メン財団代表・ロバート・M・エドゼル「芸術なくして、人生はなし」~芸術を愛する人間力

「芸術なくして、人生はなし」
レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』や、ゴッホの『ひまわり』などの芸術作品を、現物ではなくとも、誰しも一度は目にしたことがありますよね?
その作品の存在はみんな知っているのに、ほとんどの人が、それらが第2次世界大戦中に、ナチスに略奪され、破壊されようとしていた事実を知らないと思うんです。なぜ、その芸術作品がいまも、残っているのかといえば、それは、大戦中にナチスから奪い返した人たちがいたからなんです。彼らは『モニュメンツ・メン』と呼ばれる特殊部隊の隊員で、決して軍人だったわけではなかったんですが、不慣れな戦場で悪戦苦闘しながら、ナチスから作品を守った。
そんな勇敢な彼らを私が知ったのは、ヨーロッパに移住したときでした。当時はアメリカで探鉱会社を興していたのですが、それを売り払い家族揃って移住したんです。
そこで、なぜこれほど多くの建造物や美術品が戦争で壊されることなく残ったのだろうとふと疑問に思って、調べ始めたのがきっかけです。
初めは、誰もが知っていることで、私が無知なだけなのかもしれないと思ったんですが、誰に聞いても知らなかった。そこで、彼らの功績が、誰も知ることなく歴史に埋没してしまうのは、とても残念なことだと思い、彼らの調査を始めたんです。取材には、10年かかりました。調査をしなければならない地域が、ヨーロッパ各地にあり、地理的にかなり広範囲にわたっていたので、途中で何度も投げ出しそうにはなりましたね(笑)。でも、取材していくなかで、どうしてもやめられなくなってしまった出来事があったんです。
それは、まだご存命の『モニュメンツ・メン』の方にお会いしたときの話なんですが、ちょうど、彼が99歳の誕生日を迎える10日前にお会いしたんです。
彼には4人の息子がいて、彼らから、"僕らのおじいちゃんは、ほとんど一日中寝てるし、記憶も飛んでいるので、会いに来ても無駄足になると思いますよ"と言われていた。でも、実際にお会いしてみて、それまでに僕が集めた写真や資料を見ると、彼の目がキラリと光って、寝てばかりだったはずの彼が、4時間ぶっ続けで当時の話をし続けてくれたんです。それも、とても鮮明に。
そして、別れ際にその方は、"あなたが来るのを僕はずっと待っていました"と言ってくれたんです。その10日後に彼は亡くなってしまった。
後から、息子さんたちに聞いたんですが、私と会った後に"もう別れの準備ができたから、挨拶においで"と言っていたそうなんです。その出来事があって、私自身、運命を感じましたし、日本でいえば、タスキですかね、それを私が受け取ったわけですから、最後までやり遂げなければならないなと強く思うようになりました。
そうやって、調査を続けたものが、今回、映画『ミケランジェロ・プロジェクト』として世界の人たちに知ってもらえるのだから、これほど嬉しいことはありません。
私は、芸術なくして、人生はなしと思うんです。仕事をして、家族と過ごして、また仕事をしてと、それだけが人生だったらどんなに退屈なことかと思います。芸術作品に触れることで、今までの努力が報われたと感じることもあるでしょうし、なにより芸術は人を謙虚な気持ちにさせてくれる。
例えば、日本で、1000年以上の歴史を持つ陶器を手にしたら、自分が叶わない過去の先人たちの存在を知り、世界の大きさを感じる。その作品を作るのに、どれだけの壁を乗り越えたのだろうかと、その過程を考えるとグッとくるはずです。つまり、芸術は人生にとっての彩りなのかなと、また、そんな芸術を現代でも鑑賞できるために、多くの人たちの人知れぬ活躍があったことを知ってもらえたら嬉しいですね。
撮影/弦巻 勝
ロバート・M・エドゼル
1956年12月28日、アメリカ生まれ。テニス選手として活躍した後の81年に石油とガスの探鉱会社を設立。社員8人から100人近くの会社に成長させ、95年に会社を売却し、ヨーロッパに移住。『モニュメンツ・メン』の調査を開始。その調査が結実した書籍『ミケランジェロ・プロジェクト』は、全米批評家協会賞を受賞。その他にも多くの慈善活動に携わり、米最高の人道支援表彰である『NationalHumanities Medal』を受賞。現在も『モニュメンツ・メン財団代表』として世界を舞台に活躍を続けている。

モニュメンツ・メン財団代表・ロバート・M・エドゼル「芸術なくして、人生はなし」~芸術を愛する人間力

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