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映画監督・紀里谷和明「映画の力ってすげえなって思うんです」~困難に挑戦する人間力

[週刊大衆11月23日号]

映画監督・紀里谷和明「映画の力ってすげえなって思うんです」~困難に挑戦する人間力

「人は欲しくない物はいっぱいくれますけど、本当に欲しい物は与えてくれない。だから自分で取りに行くしかないんです」
俺、週刊大衆さんのファン層から絶対に嫌われていると思うんですよ。
宇多田ヒカルと結婚したやつとか、スカしたやつだってイメージがあるんですかね。実際に会って嫌われるんならしょうがないですけど、会ってもいないのに、嫌われるのは、そりゃあ傷つきますよ。俺自身は、40代、50代の男性層に好きになってもらいたいんです。本当に。
以前に撮った『CASSHERN』、『GOEMON』だって、日本映画界から"こんなの映画じゃない"と散々言われて、めちゃくちゃへこみましたよ。毎回、"死んだら寝られるな"って思いながら撮影していて、それをボロクソに言われるわけですからね。
今回、撮った『ラスト・ナイツ』だって、撮影は辛かった。プレッシャーが半端じゃなかったですから。モーガン・フリーマンやクライヴ・オーウェンとトップ俳優が出てくれたんですが、彼らのスケジュールは限られていますから、撮りこぼしは絶対に許されない。それなのに、途中、何回も現場が止まりそうになったし、撮影地のチェコは気温がマイナス20度とかで、機材も凍っちゃって、そのなかで12時間撮影。体力も気力も極限で、冗談抜きで死んじゃおうかなって思っていましたよ。
そんな状況ですから、確かに、苦しい。でもやっぱり、なんだかんだ楽しい。300人くらいのスタッフがいて、みんなでいい作品を撮ろうと一つの目標に向かって、一緒に何かするっていうのは、金では買えない経験ですからね。
これ、よく言うんですが、映画の現場って物をつくる軍隊なんですよ。本当の軍隊は物を壊すから好きじゃないんだけど、こっちはつくる軍隊だから、絶対、楽しい。それに、映画の力ってすげえなって思うんです。地方に仕事で行ったときに、外で飯を食っていたら、おじさんが"映画観ました!"って声かけてくれるんですよ。あと、海外への入国審査のときに、職業を聞かれて映画監督と答えると"何を撮ったんだ?"って言われて、『ラスト・ナイツ』の名前を出すと、"観たよ!"って。映画ってそれほど届くんですよ。それって、すさまじいことだと思うんですよ。
だから、もはや中毒、映画を撮ることが。でも、リスクも大きい。辛い思いをして映画を撮っても、周囲から散々な言われ方をするかもしれないわけですからね。自分でも"なんでそんなリスク負うんだろう"って思いますよ。ただ、そういう性分なんですよね。
子どもの頃から、自分のやりたいことをしようって思っていて、進学校に入って、大学行って、会社入ってとレールを敷かれているのが、納得できなくて、15歳のとき単身でアメリカに移住しちゃいましたからね。それを許してくれた親父はありがたかったですよね。
恐らく、その頃からなんでしょうけど、俺は自分が本当に欲しい物って誰も与えてくれないと思うんです。欲しくない物はいっぱいくれます。だから、自分で取りにいくしかない。別に人からもらうことが嫌なわけじゃない。今でも"企画ないですか"って映画会社とか、あちこちに言っていますから。けど一回ももらったことない。だから、自分でやる。
僕は本田宗一郎さんが大好きなんですけど、"世界で一番速いバイクをつくる"って何の根拠もないのに、それを実現させちゃうわけでしょう。そういう人たち見ていると、何かに熱中している姿ってかっこいいし、周りの人も嬉しそうじゃないですか。しかも、その話が孫の代まで続くんですよ。"おれのじいちゃんが、一番速いバイクつくったんだぜ"って。それって家を残してやるとか、財産残すとかってことよりも大きいと思うんですよ。
もちろん、その裏には途方もない苦労があるし、"これくらいでいいよね"ってやっていたら、人は驚かないわけですから、人以上にやらなきゃいけない。でも、そこにしか俺は人生の喜びを見いだせないんですよ。
撮影/弦巻 勝
紀里谷和明 きりや・かずあき
1968年4月20日、熊本県生まれ。83年、15歳で単身アメリカへ移住。ケンブリッジ高校卒業後、パーソンズ大学で環境デザインを学ぶ。94年にニューヨークを拠点に写真家として活動開始。SMAPなど数々のアーティストのCDジャケット、ミュージックビデオを撮影。04年に『CASSHERN』で映画監督としてデビュー。09年に映画『GOEMON』を発表。11月10日公開の映画『ラスト・ナイツ』ではハリウッド映画監督デビューを果たす。

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