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[プチ鹿島]プロレスファンとは、推理小説の読者でもあるのかもしれない

試合展開を楽しむのと同様、推理にしびれる。醍醐味は試合だけではない。その興行で誰と誰がマッチメイクされるのか? もうワクワクがとまらない。究極が対抗戦ではないだろうか。
シングルやタッグを順々にやるのもよい。全員がリングにあがって勝ち残りを決めるイルミネーションマッチも面白い。そして試合順、試合展開を一気に楽しめるのがシングルマッチ勝ち抜き戦である。
12日におこなわれた「センダイガールズ VS スターダム 団体対抗シングルマッチ勝ち抜き戦6vs6」は、勝ち抜き戦の醍醐味が爆発した。
柔道の団体対抗戦をモチーフにした戦い方だが、プロレスはそこにひと手間加える。この日のルールは以下。
・第1試合の出場者だけ発表され、2試合目以降の出場順は選手入場時までわからない
・10分引き分けの場合は両者失格
・大将戦は時間無制限1本勝負
怒涛のドラマがスタート。センダイガールズの新人・橋本千紘がいきなり3人抜き。騒然とする後楽園ホール。
橋本は名門・日大レスリング部出身初の女子プロレスラーであり、レスリングの天皇杯全日本選手権女子67キロ級3位などの実績を持つスーパールーキー。
10月11日にデビューしたばかりで東京のファンには初お目見えだったのだが、試合前から尋常ではないことがわかった。上背こそないものの、背中の筋肉のもりあがりがすごくてその後ろ姿は中西学を思い出したほど。レスリングのタックル、水車落としが次々に炸裂。総合格闘技のような風景に対抗戦の緊迫感も相まって観客は橋本ひとりに心を鷲掴みされた。
こうなると、注目されるのはスターダムの4人目に登場する紫雷イオの試合ぶりだ。相手はキャリア1ヶ月の新人ですでに3試合戦っている。エース格の紫雷イオとしては勝利という結果も当然として、試合をどう見せるかという非常に難しい「お題」を突き付けられた。いったいどうするのか。「キレイな試合」をしたらダメだと思った。
すると、紫雷は気迫と怖さを前面に打ち出して余裕もみせながら「片づけた」のだ。紫雷イオは女子プロレス界を引っ張ってゆく風格が本当についた。難しい試合に見事に満額回答。こういう特殊な状況を楽しめるのも、勝ち抜き戦という試合の妙である。
このあとも10分じゃ足りない里村明衣子と宝城カイリの組み合わせが実現したり、センダイガールズの「大将」に新種の若手ヒール・カサンドラ宮城が抜擢されたり、すべて「試合順の妙」が反映された。最後カサンドラ宮城は敗れたが、これも今後の成長物語と考えたら絶妙なキャスティングだった。
試合ごとに新鮮で、自分の展開予想も楽しめた。
「推理小説」の読後感は素晴らしかったのである。


プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。





「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





今もっとも注目すべき文系芸人・プチ鹿島氏による初の新書が双葉社より発売! 「どの週刊誌よりも売れていた」という90年代黄金期の週刊プロレスや、伝説の編集者・井上義啓氏の週刊ファイトなどの“活字プロレス”を存分に浴びた著者による、“プロレス脳”を開花させるための超実践的思想書。 「半信半疑力を鍛える」「グレーゾーンを許容する」「差別に自覚的になる」等々、著者が30年以上に及ぶプロレス観戦から学びとった人生を歩むための“教養”を、余すところなく披瀝。すべての自己啓発本やビジネス書は、本書を前に、マットに沈むこと必死!

プチ鹿島氏のコラムが読める雑誌「EX大衆」は毎月15日発売!


ブログ:http://orenobaka.com/
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