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【武豊】競馬の神様が微笑んだ1日8勝の快挙

[週刊大衆11月30日号]

人生に役立つ勝負師の作法 武豊
あれは、10年……いや、もうちょっと前のことだったかもしれません。「今日は、ノッてますね」と言われるのが、喉に刺さった小骨のように、どうにも心に引っかかる時期がありました。
1レース、1レース、すべて勝とうと集中し、そのとき持っている最高の技術で騎乗しているジョッキーに対して、それはないだろうと思っていたのです。ノッているから勝てる。ノッていないから勝てない――競馬はそんな甘いものじゃないという自負が強かったのかもしれません。
もちろん、今でもそれは変わらず持ち続けていますが同時に、力や技術だけではない何か……"競馬の神様"が存在しているような気がします。
クビ差、ハナ差はともかく、2008年、「天皇賞・秋」で、ウオッカとダイワスカーレットが演じた死闘、わずか2センチの決着は、まさしくそれで、馬の力や、騎手の技術を超えたところに、勝敗の分かれ目がありました。
いつから、この"競馬の神様"を意識したのかはもう覚えていませんが、「背中をぐっと後押ししてくれたのかな?」と思えたのは02年12月7日、阪神競馬場でのことでした。
この日、僕が騎乗機会をいただいたのは全12レース中、10鞍。前日、調整ルームで出馬表をじっくりと見ながら、「けっこういけるかも⁉」という予感はありましたが、それでもあの1日は競馬の神様が微笑んでくれたとしか思えません。騎乗した10頭のうち、9頭が1番人気で。その中には、「嘘やろう?」と何度もパドックでオッズを確認した馬や、力はあるけど、気性に難があって、乗りづらいと感じていた馬もいました。

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