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ヤリ手ホームレス「街角アベノミクス緊急座談会」 vol.1

[週刊大衆7月1日号]

安倍晋三総理が誕生して、およそ半年。80円前後で高止まりし、輸出産業を苦しめていた円相場は、円安が進み、5月半ばには100円台に。それと並行して、日本の株式市場の代表的な株価指数である日経平均株価も、同時期に1万5000円台に回復した。これは、実に5年4カ月ぶりのことだった。

アベノミクス極まれり――そう思ったのも束の間、その後、株価は乱高下。6月13日時点で、日経平均株価は1万2000円台半ばに下がり、円相場も95円前後で揉み合っている。

はたして、日本経済はどこに向かっているのか。その行方を探るべく、本誌記者は、"市場経済の最前線"で生きる、隅田川沿いに暮らすヤリ手ホームレスたちを訪ねた。


――まあ、1杯どうぞ。最近の景気はどうですか?

ターさん(以下、ター)「おっとと。こりゃ悪いね。俺はアルミ(缶拾い)をやっているんだけど、まあまあかな。ここんところ、アルミの買取価格が上がっているからね。いまは週に3回、資源回収の日を狙って、夜中から朝の6時くらいまで、自転車で墨田(区)と江東(区)を中心に回っている。夜中に回って、まあ、ゴミ袋1杯分、10~15キロってとこかな」

ヤマさん(以下、ヤマ)「買取の相場が、だいたいキロ105円ぐらい。俺は週1、2回、ひと晩でだいたい20キロ集めるんだ。だから、1回2000円ってとこだね。俺らはマンションとビルの"お得意さん"がいるの。管理人のオバチャンに、煙草とかビールをときどき渡して、缶を融通してもらっているんだ」

――安倍さんが総理になった昨年末から比べると、よくなっているんですか。

ヤマ「うん。昨年末の買取価格はキロ75円くらいだったからね。それから考えると30円上がった。それが安倍さんのおかげかどうかは、わかんないけど」

ター「買取の値段はさ、結局、需要と供給なの。いま円安なんだろ? そうすっと、外国から輸入する値段も上がっちゃうから、俺らが集めるアルミ缶を欲しがる人が増えて、値段も上がるわけよ」

安倍首相が推し進めるアベノミクスは、デフレを脱却し、本格的な景気回復を目指す経済政策。その中心に据えられているのが公共事業、金融緩和、成長戦略の「3本の矢」だ。
安倍政権誕生以降、その金融政策が功を奏し、1ドル80円前後から一気に円安が進んだ。異様な円高に苦しんできた自動車などの輸出産業からは、歓迎の声が上がった。同様に、ターさんたちにも円安の恩恵があったのだ。

――買取価格はまだ上がりそうですか。

ヤマ「まだ上がると思うよ。アルミは季節も関係するんだ。これから暑くなると、ビールだジュースだとたくさん売れるでしょ。だから、アルミの需要が増えて、買取の値段も上がる」

ツーさん(以下、ツー)「知り合いがいってたけど、いま川崎にキロ130円で買取してくれる業者がいるって」

ター「ああ、知ってる。でも、持ち込みだからなあ。川崎までチャリンコで行かないといけないから、大変だよ。ココだと買取業者が定期的にトラックで来て、そのまま回収していくんだ。まあ、運送費と手間賃を払ってるわけだな」

ツー「そいつは片道1時間半、自転車を漕いでいくっていってた。往復3時間は大変だ」

――雨の日とか、夏はキツイですね。

ヤマ「前は隅田川にも買取業者が二つ来てたけど、廃業したみたい。いまは一つになっちゃったから、言い値になっちゃうけど。まあ、騙されないようにはしているよ。昔、ハカリに細工されたこともあるし、重くなるように、こっちが石を混ぜたこともあるし。狸と狐だよ、化かし合い(笑)」

現在、ヤマさんは隅田川沿いのテントを住まいとし、ターさんも、この周辺を定期的に移動しながら寝泊りしている。
一方、ツーさんはかつてこの場所に住んでいたが、いまは体を壊し、「福祉の世話になっている」という。

――今年に入ってから、ここでの暮らしに何か変化はありますか。

ヤマ「どうかなあ。特には変わらないよ。アルミはライバルが増えて、なかなか大変だけど」

ター「暑くなってきて、アルミ缶を集めるヤツがすごく多くなったよね。でも、ヤマさんはいいよなあ。"仕事"があるんだから(笑)」

――別の仕事もされているんですか。

ヤマ「俺は60を超えてるからね。55歳以上だと、山谷のセンター(注=城北労働・福祉センター)に登録してカードを作ると、輪番で仕事を回してくれるの。大きな道路のガードレールの掃除、高速道路の脇に捨てられたゴミ拾い、あとは都内の公園の掃除だね。1日働いて6000円。センターからバスで送り迎えしてくれるからラクなんだ。まあ、順番だから、たまにだけどね」

ツー「いいね、働けて……」

――ツーさんはいま、どこに住んでいるんですか。

ツー「ドヤ(注=簡易宿泊所)だよ。山谷の」

ター「この人はね、寂しがり屋なの(笑)。家があるのに、ココによく遊びに来るんだから」

ツー「だってさ、ドヤにいても、一日中誰とも話さないんだよ。僕は体壊して福祉の世話になっているけど、いまは隣りにどんなヤツが住んでいるか知らないし、話したこともない。あそこにいると、ずーっと部屋に閉じ籠っちゃうの。ココに来ればさ、仲間もいるし、楽しい酒が飲める」

――どこが悪いんですか。

ツー「僕はもともと日雇いしてたの。いろんな建築現場で働いていたんだけど、50過ぎたある日、現場で鉄筋を運んでいたら、突然、足の付け根がバキッって。骨が折れちゃった。それから足がダメになっちゃって、仕事もできなくなったの」

ター「ホームレスは体がダメになったら、おしまい。肉体労働は体がすべてだから」

6月29日公開のvol.2に続く・・・。

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