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[プチ鹿島]退団者続出の全日本プロレスが気になる年末

 全日本プロレスが気になります。本来ならこの時期は「世界最強タッグリーグ戦」にうつつを抜かしていればいい頃だ。開幕戦の選手入場式で『オリンピア』のテーマを聞いて「ああ、今年もこの季節か」と年の瀬独特の高揚感を楽しんでいればいいのだ。もういくつ寝るとお正月のリアル感。

 子どもの頃にみた最強タッグで馬場・鶴田組が優勝したとき「これでいい正月を迎えられる」という馬場さんのコメントを『週刊ファイト』で読んだ。あれがずっと忘れられない。というのも「年末にこれだけの大仕事をしたらそりゃぁいいお正月だろうなぁ」と小学生ながらに想像できたからだ。きちんと働いた人こそいい正月を迎えられるということを、学校でも社会でもなくプロレスが教えてくれたのです。そんな大事なことを教えてくれたのは、馬場さんの前は昔話の『笠地蔵』ぐらい。

 さて、そんな全日本プロレスがピンチだ。退団者が続出している。来年の日程もまだよくわからない。無事に年を越せるのか? と心配してしまう。唯一の救いは秋山準社長が「全日本を守らないといけない」と発言していることだ。

 それにしても惜しい。昔のプロレスの映像や写真をみると会場には大人が多い。全日本はそれに近い「大人のプロレス」の匂いがした。仕事帰りのサラリーマンが世間の混雑を避けて立ち寄れる場所。私はそんな会場の風景に染まるのが好きだった。

 全日本の魅力のひとつは、とにかくレスラーがデカい。曙、諏訪魔、KENSO、大森隆男、ジョー・ドーリング……。出てくる選手がデカかった。ただひたすらみているだけでいい。しまいにはありがたい気分になってくる。そんな人たちが超満員のハジケそうな会場ではなく、適度に落ち着いた雰囲気で観戦することが可能。これぞ異空間、大人のプロレスではないか。大人のプロレスとは「ブームにならなくてもいい」プロレスである。世間にチヤホヤされなくてもいい。他の団体やレスラーがいかに世間に振り向いてもらうか懸命なのに、全日本プロレスどこか超然としていた。

 でも、やっぱりこれは観客の論理だったのだなぁ。興行会社は客を入れてナンボという当然の事実を昨今の全日本のニュースで突きつけられた。何度もいうが、行けば面白いのに……。

 こうなると期待したいのが諏訪魔である。もうダメだと思うところから成り上がれるのがプロレスの醍醐味である。上に行くしかない状況はある意味チャンス。おまけに諏訪魔は天龍引退大会での藤田和之とのタッグ対決でも観客の期待をはずした。それならもう爆発するしかない。諏訪魔も藤田も。

 圧倒的な強さとまどろっこしさを感じさせてくれるのが諏訪魔の魅力。なかなかスーパーエースとして爆発しないジリジリとしたところはある時期のジャンボ鶴田を思い出す。諏訪魔の尋常でない不器用さは貴重だ。今だからこそ、全日本プロレス勢に注目したいです。



プチ鹿島
PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。


「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ





今もっとも注目すべき文系芸人・プチ鹿島氏による初の新書が双葉社より発売! 「どの週刊誌よりも売れていた」という90年代黄金期の週刊プロレスや、伝説の編集者・井上義啓氏の週刊ファイトなどの“活字プロレス”を存分に浴びた著者による、“プロレス脳”を開花させるための超実践的思想書。 「半信半疑力を鍛える」「グレーゾーンを許容する」「差別に自覚的になる」等々、著者が30年以上に及ぶプロレス観戦から学びとった人生を歩むための“教養”を、余すところなく披瀝。すべての自己啓発本やビジネス書は、本書を前に、マットに沈むこと必死!

プチ鹿島氏のコラムが読める雑誌「EX大衆」は毎月15日発売!


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