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騎手・内田博幸「誰に対しても尊敬して生きていきたい」~競馬に懸ける人間力

[週刊大衆01月04・11日号]

騎手・内田博幸「誰に対しても尊敬して生きていきたい」~競馬に懸ける人間力

 まずは素晴らしい方々がたくさん登場しているこのコーナーにお声を掛けて頂きありがとうございます。長い騎手人生の中で、ここ数年の自分は2010年の9頭落馬事故での左腕の骨折を皮切りに、2011年に頚椎骨折、2014年にはまた左腕の骨折と、リーディングジョッキーからは少し遠ざかってしまいましたので、このような取材で声を掛けていただけるのは本当に嬉しいことです。

 自分にとって近年で一番大きな出来事といえば、やはり2011年の頚椎骨折でしばらく寝たきりになった事です。当時は病床でも常に頭の中で騎乗し、勝っている姿を自分でイメージして気持ちを奮い立たせていました。無事に完治しトレーニングを経て復帰し、8か月ぶりに騎乗した時はもう楽しくて楽しくて、暫く笑顔のまま顔が戻らないくらいでした(笑)。

 ところが、時間を掛けてリーディングへ向かうべく良いリズムを取り戻してきた頃にまた左腕の骨折となってしまったんです。振り出しに戻ったような気持ちでしたね。ただ、大怪我を経験して間もないですから、内心は生きているだけでありがたいと、必ず復帰して元の様に乗れると思って前向きに過ごしていたんです。ですが、周りは違いましたね。正直、怪我よりも辛かったのは、もうダメだろうと周りに思われ、信頼していた人たちもたくさん離れていったことですね。絶望していないのは自分だけだったんですよね(笑)。とはいっても自分はただの一騎手ですから魅せるレースをして関係者に乗せたいと思ってもらい、ファンに応援したいと思ってもらう。結局、これしかないんです。

 騎手の世界も営業力や軽快なトークも必要となってきていますが、どうにも自分にはそのセンスがないんですよね。幸い騎乗数という経験値は南関東の地方競馬出身ということで、年齢も相まってかなりのものがありますから、周りが何と言おうと騎乗には自信があります。だからこそ、周りの意見も素直に聞いて格好つけず過ごしたいと思っています。

 そして、競馬界も日々進化し続けていますよね。今年から外国人ジョッキーもJRAの免許を持ち、通年で騎乗出来るようになりましたが、これはそれだけ海外から見ても日本の競馬が輝いて見えるという事だと思うんです。質の高い競走馬がたくさんいて、質の高いレースが毎週繰り広げられている。僕は個人的に、世界に大きなレースが幾つかあれど、日本の競馬がトップレベルだとずっと誇りに思っています。

 だからこそ、若い頃からいろんな社会で紳士だなと思う先輩方の見よう見まねをしたりしてました。たかが騎手と思われたら悔しいですから。かなり影響を受けた方もいました。社会的にも立派な方なのに若くて無知な自分にも丁寧に接してくださり、心遣いも素晴らしくて。亡くなられた今でも、その方には全然及ばないですが、誰に対しても尊敬して生きていくことを特に教えて頂いたと思っています。

 たとえば「騎手」といえば競馬界の中でも華やかで目立つ仕事だと思いますが、牧場関係者や調教師、オーナー、競馬に関わる皆さん、そして、なによりファンの方々がいないと存在意義すらない仕事でしょう。きっとそれは、どの職業にも言える事だと思います。上司も部下も取引先も、どの立場の人がいなくても仕事は回らない。だから尊敬しあいたい。そんな事も含めて、後輩にもそれを伝えられる人間力を身につけたいと思っているのですが、残念ながら現状はくだらないギャグに愛想笑いしてもらっているだけです(笑)。

撮影/弦巻 勝

内田博幸 うちだ・ひろゆき

1970年7月26日、福岡県生まれ。89年に大井競馬場所属の騎手としてデビュー。00年頃から、メキメキと頭角を現し、04年に年間385勝をあげ、初めて南関東リーディングを獲得。07年には、大井競馬場で史上16人目となる地方競馬3000勝を達成。08年からJRAの騎乗免許を取得し、中央競馬界に進出。その年にエイシンデピュティで宝塚記念を制覇し、近年では、12年にゴールドシップで有馬記念を制覇するなど、日本競馬界を代表する騎手としていまなお活躍中。

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