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漫画家・中川いさみ「人の一生も4コマにしたら、ギャグ漫画なのかもしれない」~謎を探求する人間力

[週刊大衆2016年02月22日号]

漫画家・中川いさみ「人の一生も4コマにしたら、ギャグ漫画なのかもしれない」~謎を探求する人間力

 飽きっぽい性格なんですよ。一回やっちゃったものは、もういいやって思ってしまうんです。だから、漫画も長くならない。『クマのプー太郎』だって、アニメ化してもらったのに、5巻で終わっちゃいましたから。細々と、人の後ろに隠れてですが、30年、ギャグ漫画を描いてきたので、もうさすがに、一通りはやっただろうと思って、最近はストーリー漫画を描こうと思っているんです。

 ただ、僕自身、アシスタントを経て、漫画家になったわけでもなく、最初から絵も内容もゆるかったんですよ。ぶっちゃけてしまえば、落書きみたいな漫画だったので、あまり仕事って意識がなかった。たまたま、不条理漫画のブームがきて、それに乗っかっただけで、ちゃんと考えてこなかったんです。

 だから、ストーリー漫画を描くために、ワンクッション入れようと、ちばてつや先生や、大友克洋先生などの漫画家にインタビューしていく『マンガ家再入門』っていうWEB連載を始めたんです。今さらながら、ちゃんとした漫画を描くのって大変なんだなって実感しています。ちば先生なんかは、タバコ吸うのでも、タバコを取り出して、口にくわえて、火をつけるのを全部描かないと、その人のキャラクターが出ないっていうんです。すごいですよね。そうなると、主人公が泣いているだけで、1話終わりみたいなこともあるわけで、逆にシュールだなって思うし、あれこそアバンギャルドなんじゃないですかね。

 僕なんかは、いきなりくわえて吸っているところから描いていましたから。ギャグ漫画って、いかに少ないコマ数で、描くか。スピード感が、大事みたいなところがあるんですよ。だって、ギャグ漫画って4コマだからギャグだけど、あれをグーッと広げると、ホラー漫画ですよ。不幸な話だって、詳細を省いて、最後に死んじゃいましたってのだったら、笑えるけど、細かく細かく分解して、その死ぬまでの過程を20ページとか書いたら、かなりシリアスな話になりますよね。

 そう考えると、人の一生だって4コマにまとめたら、ギャグなのかもしれないし、4コマ、1個1個がストーリー漫画に育つ可能性があるんじゃないかって思うんです。だから、4コマっていうのは損だなって。ひとつのネタを膨らませるストーリー漫画と違って、常にネタを考えなきゃいけないのが。寝ようと思うと、寝られないのと同じで、ネタを出そうと思ったら、出てこないから、苦しいときもありますよ。

 でも、考えるのは、好きなんです。なんか、謎を解き明かしたい。もちろん、漫画もそうなんですけど、身近な例でいえば、料理とか。おいしいカレーは何が違うのかなって考えたら、玉ねぎだなって結論にたどり着いた。それで、玉ねぎをどうすれば、うまくなるのかって考える。料理本なんかでは、よく、茶色になるまで炒めるって書かれていますけど、それよりもたまねぎを何日か天日干しするんです。そうすると、水分がギューっと凝縮されて、おいしくなるんですよ。まあ、それを嫁とかにいっても、分かってくれないんですけどね(笑)。

 みんながあまり考えないことを考えるのが好きなんでしょうね。色々と考える余白があることが。今の時代、インターネットを使えば、すぐに謎の答えがわかっちゃうじゃないですか。それだと、おもしろくないんですよ。自分の頭で考えて、謎が解けるときが、一番、楽しいんです。ただ、謎が解けたと思うと、また新たな謎が出てきて、またわからなくなる。永遠にわからないから、おもしろいんじゃないですかね。漫画も一緒です。世に名作と呼ばれる作品を残した先生たちには、絶対に何か秘密があるはずだ。その秘密を、『マンガ家再入門』で探っていきたいですね。

撮影/弦巻 勝


中川いさみ なかがわ・いさみ
1962年7月8日、神奈川県生まれ。B型。学生時代から漫画を描き始め、85年に『うわさのトラブルマン』でデビュー。89年にビッグコミックスピリッツにて連載開始した『クマのプー太郎』が大ヒットし、アニメ化される。03年には、朝日新聞広告賞を受賞。漫画のほかにも、イラスト、エッセイなども手掛け、幅広く活躍中。

漫画家・中川いさみ「人の一生も4コマにしたら、ギャグ漫画なのかもしれない」~謎を探求する人間力

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