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野村克也×二宮清純プロ野球ぶった斬り対談 楽天快進撃の秘密 vol.1

[週刊大衆9月30日号]

二宮 野村さんが4年間にわたって監督を務めた東北楽天が、球団創設以来初めてのリーグ優勝に向かって突き進んでいます。
その原動力がマー君ことエースの田中将大。開幕から20連勝(9月10日現在=以下同)。
昨季からは24連勝で、松田清さん(元巨人、51~52年)と稲尾和久さん(元西鉄、57年)が持っていた連勝記録を56年ぶりに塗り替えました。
マー君といえば、いまでも野村さんが命名したキャッチフレーズが思い出されます。
「マー君、神の子、不思議な子」。
今季のパ・リーグのMVPは間違いないでしょう。

野村:もう、神様がいなくても勝てるんじゃないの?
素質プラス経験を積んで、僕から言うことは何もありません。

二宮:入団後、最初にキャンプで彼のピッチングを見たときの印象は、どうでしたか。

野村:普通、ルーキーを一軍で使うときは"真っすぐ"に惚れるものなんですが、彼の場合はスライダーに惚れたんです。
いいスライダー投げるなって。

二宮:彼は高校時代からスライダーに自信を持っていましたね。

野村:僕は実際にバッターボックスに入って(スライダーを)見たわけじゃないけど、あれを投げられたら右バッターは腰を引きますよ。それくらいブレーキが効いていて、よく曲がる。

二宮:現役、監督とプロ通算43年間、ユニフォームを着た野村さんの目から見ても、トップクラスのスライダーの使い手だと?

野村:僕が知っている限りでは、1番が稲尾、2番が伊藤智仁(現・東京ヤクルトコーチ)、そして3番目がマー君かな。

二宮:稲尾さんはピュッと軌道を変える鋭いスライダー、伊藤はブーメランのような曲がりの大きな高速スライダーが特徴でした。

野村:稲尾はスライダーだけでも、3種類使い分けていましたよ。

二宮:3種類ですか?

野村:ストライクを稼ぐボール。バッターを誘うボール気味の球。そして右バッターの背中から内角いっぱいに決めるボール、いまでいうインスラですね。これを状況とバッターに応じて投げ分けていた。

二宮:伊藤については元阪神の真弓明信さんが、「速さと曲がり幅が常識外れだった」と語っていたのを思い出します。

野村:智も、すごいスライダーだったね。彼はハートも強くて、ピッチャーらしいピッチャーでした。実は(ヤクルト監督時代に)智を獲るとき、松井秀喜と、どっちを獲るかという話になった。同じ年のドラフトでしたから。
ほとんどのスカウトが松井を推したんだけど、僕は智を獲ろうと。全盛期は短かったけど、93年と97年に日本一になれたのは彼のおかげですよ。

二宮:で、3番目がマー君なのは、辛口の野村さんからすれば随分、高い評価ですね。今季はコントロールもいい。ヒットや四球で出塁を許した走者は1イニングあたり1人未満です。

野村:このところ安定していますね。
でも、やはり、コントロールでも一番は稲尾かな。
"針の穴を通す"という表現があるけど、あれは稲尾のために作られたようなものですよ。
オールスター戦で何回もバッテリーを組みましたが、構えたところからミットを動かしたことがなかった。

二宮:左では江夏豊さんも精密機械のようなコントロールを誇っていましたね。

野村:江夏もよかったけど、稲尾に比べれば1ランク下ですよ。
マー君は、3つくらい下のレベルかな。
それでも、いまのピッチャーの中では相当いいほうでしょう。
回り道しなかったら、もっとコントロールのいいピッチャーになっていたのに……。

二宮:と、いいますと?

野村:実は、2年目のシーズンが始まる前に本人に聞いたんです。
「今年の目標は、なんだ?」と。
すると彼は、「ストレートで空振り三振を取れるピッチングがしたい」と答えました。
それを聞いて、"こりゃ危険だな"と思ったんですが、まだ19歳でしょう。
年齢に騙されて"それもいいんじゃない"と本人の希望どおりにさせました。

二宮:マー君にはピッチングの基本であるストレートを、もう一段階アップさせたいとの思いがあったんでしょうね。

野村:これがよくなかった(笑)。
力みにつながって、フォームのバランスを崩してしまいましたよ。
あのとき、「ピッチャーはコントロールだ」と彼にアドバイスしていたら、今頃はもっとすごいピッチャーになっていますよ。

二宮:いまよりすごかったら手がつけられない(笑)。
野村さんが、もし相手球団の指揮を執っていたら、どうマー君を攻略しますか。

野村:僕なら、キャッチャーの嶋基宏の性格から配球を読みますね。

二宮:具体的にいうと?

野村:彼は非常に怖がりなんです。
内角を突けない。
きっと、ぶつけ返されるのが嫌なんでしょうね。
バッテリーコーチだった克則(現・巨人二軍コーチ)が、ベンチから「インコース!」と怒鳴っても、無難なリードをしていましたよ。

9月24日公開のvol.2に続く・・・。

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