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ボクシングトレーナー井上真吾「父親として、してあげられることは何でもしてあげたい」~子を想う人間力

[週刊大衆2016年04月11日号]

ボクシングトレーナー井上真吾「父親として、してあげられることは何でもしてあげたい」~子を想う人間力

 息子の尚弥と拓真が、ボクシングを始めたのは、15年前。それから、兄・尚弥がWBC世界ライトフライ級、WBO世界スーパーフライ級の2階級を制覇して、弟・拓真が東洋太平洋スーパーフライ級のベルトを巻くまで、妻と娘を含め井上家5人でやってきました。

 当初は、アマチュアでしたが、自分のボクサーとしての練習が、一番にあったので、そこに子どもたちがくっついて来ているという感じでした。ただ、中学、高校と大きくなるにつれ、徐々に子どもたちのためのトレーニングになっていきましたね。ボクサーとしての経験があったので、何をやったら強くなれるのかっていうことは常々考えていました。それを子どもたちのトレーニングに取り入れて、坂道の車を押させたり、天井から吊るした縄を登らせたりしていましたね。

 高校生にもなれば、反抗期もあったんじゃないかってよく言われるんですけど、そんなことはなかったんですよ。僕は何かあったら、絶対に子どもの味方でいたいと思っていますし、子どもが考えていることをしっかり聞いてあげれば、反抗期なんてないと思うんですよね。そもそも、僕は子どもの頃から大人が嫌いなんですよ。そうした思いを持ったまま大人になったんです。もちろん、すべての大人が嫌いというわけではないんですけど、子どもの考えを聞かずに、頭ごなしに怒ったり、自分の機嫌で怒りをぶつける大人っていっぱいいるじゃないですか。なんだよ大人って、とずっと思っていたんですよ。僕は、しっかりと育った人間じゃなかった。小さい頃に両親が離婚して、学校にもろくすっぽ行ってなかったし、勉強も全然できませんでしたから。大人の社会というものに対する反発心が強かったんでしょうね。

 でも、そのぶん、社会で負けたくはないっていう思いが、すごい強かったんですよ。負けないためには、自分で全部やるしかない。だから、二十歳で塗装業の会社を起こした時も、周囲は猛反対したんですけど、恐くはなかったし、大変だなんて思ったことはなかったですね。もう、やるって決めた以上は、失敗できないわけですから、やるしかないんです。人の倍やらなければ、認められないって思っていましたし、仕事をしてお金を稼げれば、学校に行ってようがいまいが、関係ないと自分に言い聞かせて、とことん突き詰めて、仕事をしていましたね。

 社会で負けないためには、仕事だけではなくて、幸せな家庭を築きたかった。僕は親父がいなかったぶん、家庭ができたら大事にしたくなるじゃないですか。子どもに対して、父親として何をしてあげたらいいんだろうって必死に考えるんですよ。子どもの目線で、自分がやられて嫌なことはしたくないし、うれしいことはどんどんやってあげたい。だから、子どもがボクシングで世界を獲りたいのであれば、どうすれば獲れるのか、そのためには父親として、してあげられることはなんでもやってあげたいんです。

 ただ、尚がプロになる時には、さすがに葛藤はありましたね。自分はプロとしての経験がなかったので、プロのトレーナーに任せたほうがいいんじゃないかって。でも、所属する大橋ジムの会長をはじめスタッフの方々が、自分の足りない部分を全部サポートしてくれて、自分は子どもだけに専念できる環境を整えてくれたので、不安はなくなりました。もちろん、トレーナーとしてやっていて、しんどい時もありますよ。でも、やっぱり自分がきっかけで子どもたちがボクシングの道を選んだのに、あとは勝手にやってくれなんて言えないですよね。あいつらが、がんばっている以上は自分もがんばらなければいけないですよね。

 そうやってきた結果、尚は世界王者になりましたが、修正すべきところは、まだ、たくさんあります。だから、世界王者とは思えないんです。トレーナーとして、選手の悪いところを見つけるのが、仕事だったりするので、そういうのが、一切なくなって、誰とやっても負けないってところにたどり着けたら、ようやく世界王者と思えるのかもしれません。

撮影/弦巻 勝

井上真吾 いのうえ・しんご
1971年8月24日、神奈川県座間市生まれ。中学卒業後、塗装業に就き、二十歳で結婚、独立し、明成塗装を設立する。ボクシング歴はアマチュア2戦2勝。トレーナーとして、14年に長男・尚弥が、当時世界最速となる6戦でWBC世界ライトフライ級王座獲得に導く。翌年、尚弥はわずか8戦でWBO世界スーパーフライ級王者となり、世界最速2階級制覇の記録を樹立。次男・拓真は、同年に東洋太平洋スーパーフライ級王座獲得。現在も大橋ジムで2人のトレーナーとして活躍している。

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