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野球解説者・山本昌「32年間、本当に奇跡の野球人生だった」~野球を極める人間力

[週刊大衆2016年04月18日号]

野球解説者・山本昌「32年間、本当に奇跡の野球人生だった」~野球を極める人間力

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 32年間の現役生活を振り返ってみて思うのは、本当に奇跡の野球人生だったなということですね。僕は一度も飛びぬけた才能を持って、野球をやったことがありませんからね。いつも、ギリギリのところで周囲の人に手を差しのべられて、ようやくやってこられたんです。

 小学校のときは、怪童みたいな扱いでもなかったし、中学校でも補欠でしたからね。プロ野球選手になんてなれないと思っていましたから、大学で教員免許を取って、中学の先生になろうと考えていました。それで、野球部の顧問になれればなって。ただ、野球は好きだったので、高校生まではやりたいなって思っていました。高校時代は神奈川県ベスト8が最高。よくプロに引っかかったなと自分でも思います。

 まあ、引っかかったのは縁があって、高校の監督の教え子が、中日のスカウトだったんです。その高木時夫スカウトがいなければ、僕はプロに入れていなかったでしょうね。ドラフト5位で中日に入団しても鳴かず飛ばず。本当にクビ寸前でした。当時、チームのなかで一番給料が低くて、高卒ルーキーがもらう半分くらいでしたね。転機になったのは、5年目に“島流し”にされたこと。フロリダでの春キャンプが終わって、チームは日本に帰国したんですけど、僕だけ残留を命じられたんです。ドジャース傘下の1Aへの留学といえば、かっこいいですけど、実際は、“島流し”。不貞腐れましたね。

 でも、そこでアイク生原さんに出会って、運命が変わったんです。アイクさんがいなければ、翌年に引退していたと思います。彼に、投手としての基本をみっちり叩き込まれ、何より、その後、僕の代名詞にもなったスクリューボールを教えてもらったんです。それに、アメリカはとにかく実戦のチャンスが多くて、4か月で150イニングも投げられたんです。それで自信を持てた。帰国命令が出て、日本に帰ると、それまで4試合で防御率19.29という三流以下の成績しか残せなかった僕が、8試合で5勝を挙げることができたんです。翌年の巨人戦で初めて完封勝利したときは、“これでプロでやっていける”という安堵感から、涙が止まらなかったですね。

 正直、僕は野球うまくないんですよ。そんな自分が、プロで32年もやれたのは、本当に出会いに恵まれたから。あと、優柔不断なところ。“島流し”にされて、腐っても、どこかで、やっぱりちょっとは練習しなきゃなって思っちゃうんですよね。もういいやってスッパリあきらめることができない性格なんですよ。それはマウンドの上でも同じ。4点取られても、5点取られても、途中で投げ出すことはなかったですね。もしかしたら、打線が逆転してくれるかもしれないって思うと、もうちょっと頑張っておかないとってなるんですよ。あきらめが悪いんでしょうね(笑)。

 時代が変わったことも大きかったと思います。32年前にプロに入ったときは才能勝負って側面が大きかったんですが、時代とともに、いろんな技術論であったり、トレーニング方法が出てきた。酒飲んで二日酔いで、ホームランを打ったとか、徹夜明けで勝ち投手になったなんて豪傑伝説が昔はありましたけど、今の時代、そういう野球はできないですよ。レベルが上がっているし、がんばっているヤツが勝つ時代になったんです。才能を努力で凌駕できるようになったと思います。でなければ、50歳まで出来ないですよ。

 野球も時代とともに変わっているんですよね。だから、野球を100%極めたって人は絶対にいないんですよ。打率10割なんてありえないわけじゃないですか。投げることだって、奥が深いんです。僕が32年間で、試行錯誤してきたことを『ピッチング・マニア』という本にさせて頂きましたが、3年後、5年後には、書き加えられることは増えているでしょうし、終わりがないんですよね。それが、野球の一番の魅力なのかなって思います。だから今後は、プレイヤーではわからなかった面で、野球のことを極めていけたらなと思っています。

撮影/弦巻 勝


山本昌 やまもと・まさ
1965年8月11日、神奈川県出身。83年、日大藤沢高からドラフト5位で中日ドラゴンズに入団。88年に、プロ初勝利を挙げ、93年に最多勝利、最優秀防御率の2冠を獲得。94年には沢村賞に選出される。06年、阪神戦で史上最年長となる41歳1か月でノーヒットノーランを達成。その後も数々の最年長記録を更新し、昨シーズンで、引退。現在はプロ野球解説者として活躍する。

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