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カリスマホームレス スーさん「生活保護はいらない」生活術 vol.1

[週刊大衆11月26日号]

この不景気の時代、いつリストラされるか、はたまた会社が倒産するかはわからない。今年55歳になった本誌記者も気持ちは同じ。公園などで路上生活をしている人を目にすると、「明日は我が身か」と決して他人事とは思えない昨今……。そんな折も折、「隅田川に伝説のカリスマホームレスがいる。話を聞いてこい!」という編集部からのお達しが。"最悪事態"になったときの生活とは、いかなるものか。10月下旬のある晴れた午後、記者は隅田川のホームレス・スーさん(65)を訪ねた――。


※※
観光客で賑わう浅草・雷門から歩いて6分、隅田川沿いの遊歩道の一角に、ブルーシートで覆われたスーさんの家はあった。

秋の柔らかい日差しにキラキラ光る川面には、ボラが跳ね飛び、川を挟んで東京の新名所・東京スカイツリーがデンと聳える。交通至便、日当たり・風通し良好、都心の一等地にある"一戸建て"である。

「こんにちはー」入口のシートをめくって声をかけると、中から返事が。「ま、入ってよ」と、記者を快く招き入れてくれた。小柄で丸顔、人のよさそうなオジサンである。

部屋の広さは横1・5 メートル、奥行きが2メートルちょっと。立つと頭がつっかえる高さだが、狭さは感じさせない。
入口横にボンベ式のコンロと小さな棚があり、調味料や即席みそ汁、漬け物などが整然と置かれている。床はスノコの上に絨毯を敷いてあり、地面から5センチほど床高だ。居心地もよく、子供の頃に作った"秘密基地"を思い出す。
「ここに来て、もう15年になるかなあ。最初はね、本当に天国だと思ったよ」

スーさんの生まれは栃木県。建設作業員として全国の現場を渡り歩き、15年ほど前、50歳の頃に働き先を見つけて上京した。
「30万円ほど持ってたんだけど、浅草で飲んでたら盗まれてしまってね。だけど心配なんかしなかったよ。どこかの飯場に潜り込めばどうにかなると思ってた」

文無しになった彼がブラブラ隅田川沿いを歩いていると、たくさんの段ボール小屋がひしめいていた。その中の1軒をひょいと覗くと、「どうした? まあ、入って来なよ。酒もあるぞ」と手招きされた。

小屋には4~5人いて、コンビニ弁当を肴に酒を飲んでいた。
「あの頃はコンビニも売れ残りの弁当を気前よくくれたし、ゴミ捨て場の電化製品も業者に持っていけば数千円になった。テレホンカードを買い取ってくれる専門業者もいたしね。だから、昼間っから酒を飲んで宴会ができたんだよ」

この場所の生活を気に入ったスーさんは、すぐに"仲間入り"を果たす。当時、隅田川の河川敷に住んでいたホームレスは200人ほど。もともと働き者で器用だった彼は、拾った木片や建築現場から貰ってきた廃材で骨組みを作り、しっかりとした"木造住居"を作ってしまった。
「木で枠組みを作って、花見シーズンに捨てられる青いビニールシートを被せてね。仲間の家も何軒も作ってやったよ。段ボールだけじゃ寒いし暑いし、なにより、わびしいじゃない」

次が"電気"だった。「小屋はさ、ろうそくだと危ないんだよ。何かに燃え移ったら、すぐ火事だろう? どうにか電気を引けないかと思ってね」

そこで思いついたのが、車の古いバッテリーだ。
「廃品でも、いくらか電気は残ってる。これをガソリンスタンドからもらってきて、いろいろ試したんだ。で、ほら、これ見てよ」

壁のスイッチを入れると、バイク用のライトがパッと室内を明るくした。スーさんは、バッテリーの研究をさらに続け、ついには捨てられていたカラオケ機材まで再生させてしまう。隅田川沿いの宴会には、ホームレスたちの陽気な歌声が響くようになった。
「坂口さんが来たのは、その頃だった。たまたま通りかかったら電気が点いてるって珍しがり、そのまま、ここで一緒に飲んでさ」

「坂口さん」とは、建築家で作家の坂口恭平氏。スーさんの生活を題材に、『TOKYO 0円ハウス0円生活』『隅田川のエジソン』など本を書いた後、「人と住まい」をテーマに活動を続ける、いま注目の人物だ。

建築家までをも虜にした"スーさん式住宅"は、ほかの居住者にも広がり、彼は、隅田川界隈では知らぬ者がいないほどの存在になった。
「でも、そんな天国みたいな生活も、この何年かで、だんだん厳しくなってね」

スーさんは溜め息を一つつきながら、「アンタ、酒は? 飲むんだろ?」と、記者に焼酎を勧めてくれた。
「まず、テレカが携帯の普及でダメになって、家電も(リサイクル法で)拾いづらくなってね。あと、地デジ化? あれは痛かった。古いテレビを拾ってきても、誰も買い取ってくれなくなっちゃったんだよ。スカイツリーなんて騒いでるけど、オレには迷惑な話だよ」

以前は小屋で見ていたテレビも、地上波デジタル化で映らなくなり、いまはラジオのみの生活だという。ホームレスにとっての収入源が徐々に失われるなか、仲間たちは減り始め、さらに都の路上生活者対策が、それに拍車をかけた。
「都が隅田川の路上生活者に都営アパートへ転居するように斡旋してきてね。出ていったら絶対ここ(隅田川沿い)に戻らないという誓約書を書かせられるんだけど、月2000円だから、どんどん出ていったよね」

スーさんによれば、いまこの地にある小屋は15軒ほどで、"新規住民"は認められていないという。行政側も、長らく住んでいるホームレスを強引に追い出すことはせず、自然と減るのを待っているようだ。

11月22日公開のvol.2に続く・・・。

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