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落語家・立川志らら「どんな失敗をしても、落語家としての糧になるんです」~気配りの人間力

[週刊大衆2016年05月02日号]

落語家・立川志らら「どんな失敗をしても、落語家としての糧になるんです」~気配りの人間力

 去年の10月に真打に昇進したばかりなので、まだこそばゆいですが、“志らら師匠”なんて呼ばれつつ、引き続き今も高田文夫先生の付き人をやってるんですよ。

 だから先月、国立演劇上での真打昇進披露公演では、僕はトリなんですが、その前、高田先生と松村邦洋さんの漫才の出番前は、舞台袖でお茶と喉スプレーを持って、立っていましたから。

 そもそも僕は、師匠志らくの五番弟子として入門しましたが、たまたま高田先生が師匠に“そんなに弟子がいて大丈夫か? 一人ぐらい預かってやろうか?”という一言から、入門して半年で、高田先生のところに預けられたんです。それが真打になっても続いてるわけですが、志らく一門としては兄弟子が辞めたり色々あって、今は一番弟子になりました。

 落語界において、師匠は絶対の存在ですから、呼び出されたらすぐに駆け付けなきゃしくじりになります。当時は携帯電話なんてないので、外出中は自宅の電話の留守電をマメに公衆電話から確認するんです。ある時、談志師匠に入門したての後輩と安い居酒屋で飲んでいて、彼が“留守電、聞いてきます”って出てってすぐに青い顔で戻って来たんです。“どうした?”って聞いたら、彼は留守電の応答メッセージを、買った時の“只今留守にしております”という女性の機械音にしたままだったので、ただでさえ用事があってイライラしている談志師匠が怒っちゃって。“俺はこんな変な声の女の家に電話した覚えはない! ガチャ”って怒鳴り声が録音されていて、“どうしたらいいんですか~?”って。

 携帯電話を持ち始めてからは便利さより危険度が上回りましたね。いつでもつながる恐怖感。朝の通勤ラッシュの電車の中で、よりによって高田先生からの着信があって、マナーとしては出ちゃいけないんですけど、そこは絶対の存在ですから出たら、“お前、いまどこにいるんだ?”って聞かれたので、“すいません、今周りに人がたくさんいて……”って言ったら、“お前は、朝からそんなに人気者か! ガチャ”って切られました。もうその瞬間からパニックですよ。え? 今の電話なんだったんだって。

 振り返ると息抜きみたいな時間って、僕が仕事で地方に行くときかもしれないです。その期間は、気を遣うといってもお土産くらいですから。ただ、そのスケジュールを伝えるタイミングは気を遣わないと。早すぎると忘れられちゃうし、ギリギリだと“その日は用事があったのに早く言えよ”となるので。でも僕はそういうのが楽しいんですよね。憧れている人だからなんでしょうけど、まったく苦にならない。四六時中、その人のことを考えていますから……って言うと気持ち悪いですけど。だから、真打でも高田先生の付き人をやめたくないんです。

 もちろん、そういう下働きが嫌いな人もいます。だって、やればイコール落語が上手になるわけじゃないし。でも僕は、凄い人のそばで見たり、聞いたりしたことが、高座とかラジオとかで、いつかどこかで、必ずネタとして喋れる日が来ると思う超プラス思考なんです。やっぱり、落語って自分一人で部隊に上がって好きにできる分、その人となりが出るんじゃないかと思うんですよね。だから、どんな失敗をしても、それは落語家としての糧になるんだと。そう考えると、こんなに楽しい毎日は無いと思います。こういう考えは、何も落語家だけに限らず皆さんにも当てはまる部分はあると思います。

 確かに落語家なんて、当たり前ですが固定給なんてないし、真打になったからって、いつレギュラーでやってる仕事がなくなるかわからない。でも、学生時代から追っかけていた高田先生や、師匠志らくの弟子として落語ができて、その周りの皆さんにかわいがってもらえている今は、幸せ者だと思います。

 真打にはなりましたが、今の気持ちは、大きい会場でやりたいとか、長期間公演をやりたいっていうよりは、沢山の人から気軽に“やらない?”って誘ってもらえる落語家になりたいですね。なんなら落語じゃない依頼でも大歓迎です。

撮影/弦巻 勝


立川志らら たてかわ・しらら
1973年6月26日神奈川県生まれ。専修大学中退後の97年に、立川志らくに入門。半年後に高田文夫の預かり弟子も兼任。15年の10月に真打昇進。「全国縦断チャリティーつり祭り」では、落語をやらずに全国を廻る。

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