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「勝負師の作法」スペシャル版 武豊「苦悩の日々と復活ダービー制覇」 vol.1

[週刊大衆6月17日号]

5月26日、第80回「日本ダービー」。パドックでキズナに跨った武豊は、単勝オッズが表示される電光掲示板を見上げ、何かを噛み締めるように目を閉じた。
「普通に考えたら、2歳王者を決める朝日杯FSを勝ち、皐月賞も勝ったロゴタイプが1番人気ですよね。でも、前日売りからずっとキズナが1番人気に推されていて。なんでやろうと、ちょっと不思議な感じでしたね」(武豊=以下同)

日本ダービーを特集した本誌6月3日号で掲載した元ジョッキー・安藤勝己氏との対談で、武はこんな話をしていた。
「結果的に皐月賞をパスしましたが、本当なら弥生賞を勝って、皐月賞に進みたかったんです。でも、回避という決断をしました。皐月賞で上位3頭が強いのもわかったし、僕とキズナは挑戦者の立場でした」

ところが、フタを開けてみると1番人気に推されたのは、武とキズナ。毎年、ダービーが近づくと、「プレッシャー!? もちろんありますが、それ以上に、1番人気になるのは最高に嬉しいです」と話していた男をファンは支持したのだ。

震災の復興を祈るのと同時に、支援してくれた世界中の人たちに感謝の気持ちを込めて付けられた馬名。人と人とのキズナを大切にした生産者、ノースヒルズの前田幸冶代表と前田晋二オーナー。武にすべてを託した佐々木晶三調教師。そして、昨年11月の落馬事故で、いまも療養中の佐藤哲三騎手……。

武は、そのすべての想いを背負い、1枠1番のゲートに入った。
「パドックの気配もすごくよかったし、返し馬でもすごく馬が落ち着いていて。もっといえば、天候、芝の状態、枠順……と、すべてがいい方向に向かっていたような気がします」

このとき、武は勝利の予感を覚えていたという。
「初めて跨った頃は、ものすごくヤンチャ。それが、一戦ごとに大人になるのと同時に、強くなっていって。これまでダービーを制したスペシャルウィーク、アドマイヤベガ、タニノギムレット、キズナの父であるディープインパクトと比べても遜色ないというか、同じような雰囲気を漂わせていましたから」

作戦は……何もない。自分の感覚を信じ、馬と呼吸を合わせることに専念した。

だから、向正面でメイケイペガスターがハナを主張、先頭集団が乱ペース気味になったときも少しも慌てることはなかった。
「やることはひとつだけなんで、あれこれ考えても仕方がないですから。だからというわけじゃないけど、当日、僕は7レースからだったんで、昼近くまでぐっすり寝ていました(笑)」

憎らしいほどの余裕。一瞬、スタンドがどよめいたのは、最後の直線、キズナの前を走る2頭がふらつき、進路が塞がれたかに見えたときだ。
「でも、少し前から見えていましたからね。予測もしていたし。新聞は、絶体絶命って書いてましたけど(笑)、そんな大げさなものじゃない。それに、あそこは僕も引けませんから」

手綱を押し、左ステッキを振り上げると、キズナは弾むようなフットワークで一気に加速。その瞬間、武は勝利を確信したという。

6月13日公開のvol.2に続く・・・。

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