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泉谷しげる「嫌われるってことは、無視されるより格が上なんだから」~怒りの人間力

[週刊大衆2016年06月13日号]

泉谷しげる「嫌われるってことは、無視されるより格が上なんだから」~怒りの人間力

 こういうページだとね、自分が人生を達観したような記事になりかねないから、先に言っとくけどよ。達観なんてのは、バカバカしい。要は、あきらめているってことだろう。だから、大人物のように書かないで、やばいな、コイツって感じで紹介してくれよ。今は、俺たち以上に若いやつらが達観しちゃっているから、本当につまんねえ。我慢しないで、欲望に忠実に、衝動に正直に、ガツガツいかないとダメだよ。欲望だとか嫉妬は、いい原動力なんだから。

 ついこの間も、定例のライブで、後半バテバテになっちゃってさ、水が空っぽになってんのに、スタッフが全然、持ってこねえんだよ。もうバテる寸前だったから、客の前で“水持ってこい!”ってキレちゃってさ。そしたらさ、怒ると回復するんだよ(笑)。さっきまで、もうダメだと思っていたのに、火事場の馬鹿力みたいに、急に元気になっちゃってさ。やっぱり、怒りって大事だなと思ったね。俺も年を取ってくるとさ、ちょっと優しい人間になろうなんて、姑息なことを考えたりもしたんだけど、やっぱりダメ。怒っていないと、老けていくよ。ライブの時は、そのままの勢いで、“我慢してんじゃねえぞ、少しは文句言えこの野郎”って客にも怒鳴ってね。でも、それが生きる原動力になるんですよ。

 若い時は、客と平気で喧嘩していたからね。当時は、客の圧力がすごかった。歓声じゃなくてヤジだから。俺のほうも負けてられないからさ、“生意気なんだよ、客のくせに”なんて怒鳴ったり。「客に説教するアーティストは泉谷が一番最初だ」なんて、変なところで有名になったりしちゃってさ(笑)。俺のことを嫌いなやつは、いっぱいいたよ。暴言を吐くし、滅茶苦茶なことするし。吉田拓郎、井上陽水なんかとつくったレコード会社『フォーライフ』を辞めたときは、“フォークの裏切り者”なんて呼ばれていたからね。あのときは、ライブの観客が減ったなんてもんじゃなくて、もう消失(笑)。

 でも、今に見てろみたいなものがないと、向上しないんだよ。会社を経営するために、あーだ、こーだとやっている暇があるなら、いい曲書けよ。アーティストは、いい曲、いいステージを作るための苦しみが、一番のプレッシャーでなければ、ダメなんだよ。お前らが、経営に時間に取られている間に、おれはいい曲作ってやるってのが、大きな原動力になったと思うよ。やっぱり、嫌われてこそでしょう。嫌われるってことは、無視されるより格が上なんだから。嫌われていたやつが振り向いたときは大きいよ。本当の人気ってそこなんだよ。

 大体、好かれようってほうが嫌だろう。客を失ったらどうしようとか、俺のこと嫌いにならないでね、なんていうやつを好きになるか? 今は、嫌われたらどうしようとか、傷ついたらどうしようっていうやつばっかりじゃん。傷つけよ! そうしなきゃ、強くならないだろう。音楽とか、映画、あれは傷をもった人たちを相手にするもんだから。だって、エンターテインメントって傷でしょう。必ずヒーローは挫折するじゃない(笑)。最後、どうせ復活するくせにこの野郎ってわかってんだけど、そのパターンってみんな大好きじゃん。一回挫折をして、そこからどうやって立ち直るかが、エンターテインメントのテーマでしょ。

 今回、出演した映画『サブイボマスク』もまさにそう。シャッター通り商店街を、ファンキー加藤くん演じる若者が活性化していくんだけど、挫折もしないままだったら、見ているほうもつまらないでしょう。だから、嫌われないように、傷つかないようにって、媚びる必要なんてないんだよ。俺は、自分がやりたくて歌っているんだから、客が一人もいなくなっても歌っていると思うし、これからも欲望を剥き出しで、やっていくよ。

撮影/弦巻 勝


泉谷しげる いずみや・しげる
1948年5月11日生まれ、東京都出身。71年、ファーストアルバム『泉谷しげる登場』でデビュー。翌年の『春夏秋冬』が大ヒットし、一躍脚光を浴びる。78年にドラマ『ハッピーですか?』に出演し、役者デビュー。79年の吉展ちゃん誘拐事件を描いたドラマ『誘拐』での演技が絶賛され、その後も、音楽活動のかたわら、数々の映画、ドラマに出演する。現在は、そのほかにも画家として、個展を開催するなど、マルチな才能を発揮し、第一線で活躍中。

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